/2005年3月号

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特集

侵略的外来種 米国編

MARCH 2005

文=スーザン・マグラス 写真=メリッサ・ファーロー

からやってきて生態系に脅威をもたらすのが「侵略的外来種」と呼ばれる生物だ。人間に危害をおよぼすもの、経済活動に影響を与えるもの、自然を破壊するものと様々で、米国では侵略的外来種による被害額は年間1400億ドル以上と推定される。加速度的に増えつづけ、生物の多様性を奪う侵略的外来種をめぐる米国の現状を報告する。(この記事は2005年3月号に掲載されたものです。)

 影が長く伸びて、アスファルトの道路が冷える夕暮れになると、米国フロリダ州のエバーグレーズ国立公園にいるヘビたちは、餌を探しに姿を現す。私は真っ赤なスポーツカーの自動定速走行システムを時速40キロに設定し、国立公園内の対向2車線の道路を何度も行ったり来たりしてヘビを探していた。

 午後8時23分、路上に短くて太ったヘビが現れた。動かない。車を降りて近寄ると、頭をもたげて口をぱかっと開き、シューッと威嚇した。ヌママムシだ。あわてて車に戻る。

 8時28分、今度はくねくねした黒っぽくて細いヘビ。目当てのヘビはこんなに細くない。9時3分、ちょっと太めのヘビがいた。近づいて調べる価値がありそうだ。残念、はずれだ。ピグミーガラガラヘビだろう。

 しばらく何も見つからなかった。午後10時、後ろにヘッドライトが見えた。バックミラーでどんどん近づいてくる明かりを確認し、前方の道路に目を戻した瞬間、そこにいた。探していたヘビだ。行く手をさえぎる大きなヘビ。胴体が人間の太もも並みで、長さは道路の幅ほどある。危うくひくところだった。

 ブレーキを力いっぱい踏み、窓から腕を出して後続車に警告した。後続車は私の車をよけて横に出た。ドライバーはヘビをひく直前にその姿に気付き、あわてて路肩によけてから道路に戻って走り抜けた。ひし形模様のある褐色と濃い灰色の、光沢のある皮に包まれたヘビは無事だった。

 これはビルマニシキヘビ。北米の爬虫類を紹介した野外観察図鑑には載っていない。だが、フロリダ州で野生のビルマニシキヘビを見たければ、夏の夜、エバーグレーズ国立公園内の道路を走ってみるといい。車のヘッドライトに照らし出されたその姿は、北米にいるどのヘビよりも大きいが、それでもビルマニシキヘビとしては小ぶりなほうだ。寿命は25年ほどで、体長は最大6メートルに達する。胴体の太さは電柱並みになり、シカの成獣をまるごと1頭飲み込んでしまうこともある。

 エバーグレーズ国立公園の生物学者スキップ・スノウはここ数年、孵化したてから成長したものまで、たくさんのビルマニシキヘビを調べてきた。「ここに定着し、繁殖し始めたことはほぼ確実です」と、スノウはまだ信じられないという表情で話した。

 スノウが今夜ここにいたら、体長3メートルのこのヘビを捕まえて研究室に持ち帰り、安楽死させて解剖するだろう。だが彼は別の場所で仕事をしている。私は情けないことに車内ですくみ、しなくても同じなのにドアをロックしようとしている。ヘビはじっと横たわっていたが、私が観察を終えるのを見計らうように、のろのろと滑るようにしてやぶの中に姿を消した。

 ロッジに戻り、夜勤のマネジャーにニシキヘビを見たと話した。「3メートル? ちっとも珍しくないね」。彼は南部訛りで答えた。

本誌には、より詳しい情報が掲載されています。ぜひ本誌もお読みください。


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