/2004年9月号

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特集

温暖化1
大地と海のシグナル

SEPTEMBER 2004

文=ダニエル・グリック 写真=ピーター・エシック

速に後退する山岳地帯の氷河、年々薄くなる北極圏の海氷。海面上昇で海に没しそうな小島がある一方で、水源が枯渇して干上がった湖もある。大地、そして海で起こっている異変をリポート。(この記事は2004年9月号に掲載されたものです。)

 装備は最小限でいい。氷河の研究者ダニエル・フェイグレはバックパックをかつぐ私を見て言った。ここは米国モンタナ州のグレイシャー(氷河)国立公園。フェイグレと二人の研究者、それに私の一行は、アイゼンにピッケル、クマよけスプレーなどを持って同公園内のスペリー氷河を目指す。フェイグレたちは10年以上、この公園の氷河が後退していく様子を計測している。

 これまでに得られた結果は驚くべき内容だ。1910年当時、ここには推定150の氷河があったが、今では30足らず。しかも、その大半は面積が3分の2ほどに縮小している。フェイグレは、公園内の氷河のほとんど、もしくはすべてが30年以内に消えると予測、グレイシャー国立公園とは名ばかりになるのでは、と話す。

 「本来なら何十万年もかけて徐々に進行する変化が、わずか何十年という短い時間で起きている」と、フェイグレは言う。

 地球の温暖化は進んでいる。人間の活動が原因だ。科学者たちは様々な兆候から、そう確信している。特に石油やガソリンなどの化石燃料を燃やすと、大気中に二酸化炭素などの温室効果ガスが蓄積されて温暖化が進行すると、大半の科学者が考えている。

急速に進む温暖化

 「以前はもっとそばまで氷河が来ていた」と、フェイグレは氷河の急勾配を登りながら言った。歩道脇の標識には、スペリー氷河が1901年の325ヘクタールから現在120ヘクタールに縮小したと書いてある。「この標識はもう古い。今では100ヘクタール足らずだ」と、彼は話す。

 地球上のあらゆる場所で、氷に異変が起きている。アフリカの有名なキリマンジャロの雪は1912年以降、80%以上が解けた。インドのガルワル・ヒマラヤ氷河も急速に後退し、この調子だとヒマラヤ中部と東部の氷河は2035年までにほとんど消えてしまうかもしれない。北極の海氷もこの半世紀で大幅に薄くなり、氷が浮かぶ海域は過去30年間で約10%縮まった。NASA(米航空宇宙局)の調査で、グリーンランドをおおう氷床の融解も確認されている。

  北半球では、春に氷の割れる時期が150年前に比べて9日早まり、秋の結氷は10日遅くなった。スイスの山から、赤道にあるインドネシアのイリアン・ジャヤ氷河まで、氷原や氷河、海氷が急速に消えようとしている。

 気温が上がると氷河や万年雪が解け、大量の水が海に流れ込む。海水温が上がると海水は膨張する。こうした変化が組み合わさって、この100年間に世界の海面は平均10~20センチ上昇したと、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は報告している。

 46億年の地球の歴史で、海面は大幅な上昇と下降を繰り返してきたという。だが、最近は過去2000~3000年の平均上昇率を上回る、年に2ミリの割合で世界の海面が上昇している。この傾向が続けば、世界の海岸線は驚くほど変わりかねない。

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