/2004年9月号

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特集

総論 温暖化
地球のシグナル

SEPTEMBER 2004

文=ティム・アペンゼラー科学担当副編集長/デニス・R・ディミック 環境・技術担当副編集長

暖化がハイペースで進む地球が警鐘を鳴らし始めている。本特集は3部構成により、様々な視点から温暖化の現状を探る(この記事は2004年9月号に掲載されたものです。)

 地球温暖化の影響が出るのは遠い将来のことで、今から心配する必要はないように思える。来週の天気予報もあてにならないのに、長期的な気候変動など予測できそうにない。寒い冬の日には、少しくらい暖かくなってもいいと思う。環境保護活動家は温暖化の危機を叫び、「車に乗るな」「つましい生活をしろ」と、私たちを脅しているだけに違いない……。

 そう考えれば、気が楽かもしれない。だが、この特集の第1部「大地と海のシグナル」を読んでいただきたい。様々な場所で起こっている異変は、地球からの警告だ。

 米国のアラスカ州から南米アンデス山脈の雪峰まで、今この瞬間にも温暖化は急速に進んでいる。過去100年の地球の気温上昇は平均で0.6℃だが、現在、高緯度地方ではもっと大幅に上昇している。氷は解け、河川の水量は減り、海岸の浸食が進み、人々の生活圏を脅かしているのだ。

 第2部「生き物たちのシグナル」で紹介するのは、動植物に及びつつある温暖化の影響。それらはすでに起きている事実だ。変化の多くは、私たちの知らない所で進んでいる。だからと言って、無視することはできない。それらは、ほかの地域での今後の変化を予告しているからだ。

 「ちょっと待ってほしい」と、懐疑的な人たちは言うだろう。気候は変わりやすい。1000年前、ヨーロッパは温暖で、英国でもワイン用のブドウが栽培できた。だが400年前までにテムズ川が何度も凍結するほど寒冷化が進んだ。今の気温上昇も自然の変動にすぎず、一時的なものではないか。

 気候の専門家に言わせれば、それは甘い考えだ。確かに、これから紹介する温暖化の兆候のなかには、自然の気候リズムで説明できるものもあるだろう。だが地球規模で進む異常な気温上昇は、別の要因によるものだ。

 人類は長年、森林を伐採し、石炭・石油・天然ガスを燃やし、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを大気中に放出してきた。人為的な活動による二酸化炭素の排出量は、植物の光合成や海水中に溶け込むことによる吸収量を上回っている(2004年2月号の特集「炭素の行方」参照)。

 現在、大気中の二酸化炭素濃度は過去数十万年のどの時期よりも高い。「今や気候変動への人間の影響は無視できない」と、米国プリンストン大学の気候専門家ジョージ・フィランダーは話す。

 国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が2001年に報告した内容によると、過去100年間の気温上昇が人間の活動に起因することはほぼ確実だ。地球の気温はこの1000年のうちで最も急速に上昇している。火山爆発や太陽の活動などの自然要因だけでは気温上昇を説明できない。

 IPCCは、地球の気温が今世紀末までにさらに1.4?5.8℃上がると予測している。だが、温暖化は一定のペースで進むとは限らない。第3部「過去からのシグナル」で紹介するように、過去を調べると、地球の温度調節機能は遅れて反応するようだ。初めはゆっくり上がる気温が、ある時急に上昇し、大災害を招きかねないと一部の専門家は懸念する。地球の温度調節機能をいじり続けるのは「賢明とは言えない」と、フィランダーは警告する。

本誌には、より詳しい情報が掲載されています。ぜひ本誌もお読みください。


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