/2004年6月号

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特集

枯渇が迫る石油

JUNE 2004

限られた
地球資源の行方

文=ティム・アペンゼラー 写真=サラ・リーン

要が増え続ける原油は、いつか必ず枯渇する。世界の原油産出量からみて、そのピークはいつくるのか。最も可能性が高いとされるのは2040年頃だ。イラクをはじめ不安定な中東情勢が続くいま、最新の原油事情をリポートする。 (この記事は2004年6月号に掲載されたものです。)

 水深2キロほど海底のさらにその下、泥と岩の層を5キロ掘り進むと、そこに“宝”が眠っている。2003年春、掘削船「ディスカバラー・エンタープライズ号」は、この宝に何とか手を伸ばそうと様々な問題と闘っていた。この船はもう2カ月以上、メキシコ湾のある地点にとどまり、推定10億バレル(1バレル=約159リットル)の原油が眠る海底の岩盤を掘り続けている。過去30年間に米国領内で発見された油田では最大級だ。掘削は石油メジャーBP(旧ブリティッシュ・ペトロリアム)が手がけている。

 BPがここで掘削を計画している油井は全部で25カ所。この巨大な海底油田の広さは140平方キロにもなる。来年には、浮遊式の石油プラットフォームを使って各油井から原油を集め、パイプラインで陸地へ送る作業が始まる予定だ。プロジェクト全体の費用は40億ドル。だが産出量の予測が当たっていれば、それぞれの油井はいずれ1日数万バレルの原油を産出するようになる。

 大型のスポーツ・ユーティリティー・ビークル(SUV)の人気や、米国の高速道路の渋滞ぶりからは、石油がいくらでも手に入る時代が終わりに近づいているとは想像しにくい。世界的に原油不足が生じているわけでもない。むしろ逆だ。世界は現在も大量の原油産出が可能であり、1バレル当たりの原油価格は現在30ドル台だが、石油輸出国機構(OPEC)が減産を止めれば一気に急落するはずだ。

 米国のガソリン税は1リットル当たり平均10セントと安いため(日本と欧州の5分の1以下)、米国民の多くは節約しようとは考えない。石油の需要は世界中で増えているが、消費量は依然として米国がトップを走っている。人口は世界の5%にすぎないのに、世界の総生産量の4分の1の石油を消費する“大食漢”ぶりだ。

 だが、世界の石油需要を満たすことはますます困難になっている。以前からある油田には、もはや頼れない。ハワイとアラスカを除く米国本土の48州では、原油の産出量が大きく落ち込み、ピーク時の半分以下になっている。アラスカのノース・スロープ油田やヨーロッパの北海油田など、20年前に急成長した新興油田の産出量も減少に転じた。

 こうした状況に加えて、ベネズエラやナイジェリアの政情不安が世界の原油供給に暗い影を投げかけている。中東は依然として原油の宝庫だが、戦争と不安定な政治情勢を考えれば、この地域に原油の供給を依存するのは危険きわまりない。

 そこで石油会社は、莫大な資金と労力をかけて新しい油田の探査を進めている。だが結局のところ、安い原油を探し当てても問題は解決しそうにない。石油の消費は地球環境や人々の健康、納税者の財布に大きな負担を強いるだけでない。いつまでも石油に頼る生活を続けることは不可能だからだ。地球にある原油の量には限りがある。産出量は頭打ちになり、やがて減少に転じる。5年後かそれとも30年後なのか。地質学者やエコノミストの間では、「原油産出のピーク」がいつ訪れるかをめぐって激しい議論が起きている。だが、いずれその日が来ることを疑う声はほとんどない。

 なかには悲惨な未来を予測する専門家もいる。原油不足による石油価格の急騰が経済破綻を招き、タールサンド(油砂)やオイルシェール(油母頁岩)といった原油以外の資源から何とかして石油をしぼり出そうとするようになる、というのだ。だが一方では、石油の使用量を抑え、代替エネルギーの開発を進めれば、石油が使えなくなった時の痛みを和らげることができると考える専門家もいる。

 「エネルギー資源の移行を容易にするために、私たちにできることはたくさんある。持続可能な社会・経済システムの下でも、素晴らしい生活を送れる。もちろん、誰もがSUVに乗れるわけではありませんが」と、エネルギー問題のコンサルタント、アルフレッド・カバーロは言う。

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