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特集

新シリーズ
70億人の地球

JANUARY 2011

文=ロバート・クンジグ

2011年、世界の人口は70億人に達すると予測されている。地球にはこれだけの人々を支えられる資源はあるのか? 新シリーズ第1回。

3分でわかる「70億人の地球」
特設サイトへ

動画翻訳

70億は膨大な数字です
2011年末までに あなたは
地球上に暮らす70億人の1人となるでしょう

1から70億まで 声に出して数えると200年かかります
70億歩 進むと
地球を133周できます

1800年世界の人口は10億人でした

130年後
20億
30億
40億
50億
60億
70億
80億
2045年には90億人に達しそうです

1秒ごとに
およそ5人が生まれ
2人が死んでいます
このビデオを見ている間にも
人口は170人も増えます

平均寿命も至る所で延びています
2010年平均寿命は69歳
1960年には53歳でした

2008年
人類史上はじめて
都市人口が農村人口を上回りました

メガシティとは人口1000万人以上の都市です

メキシコシティ 東京 ニューヨーク1975年には世界に3つだけでしたが
今では21都市もあります
2050年までに
人類の70%がメガシティで暮らすようになるでしょう

しかし
考えているほど
空間を占拠することには
なりません
70億人が肩を並べて立った場合ロサンゼルス市と同じ面積があれば足ります

つまり
人類に必要なのは
空間ではないのです
大切なのはバランスです

人類の5%が世界のエネルギーの23%を消費しています

人類の13%がきれいな飲料水を確保できないでいます

人類の38%が十分な衛生設備を持っていません

70億人の人々が
7000を超す言語を話し
194の国で暮らしています
70億人について考える70億の理由があります

ナショナル ジオグラフィック誌では1年にわたり世界人口に関するシリーズをお伝えします
「ナショナル ジオグラフィック70億人の地球」で検索してください

 1677年秋のある日、オランダ西部のデルフトに暮らす織物商が、妻と一緒にはげんでいた行為を唐突にやめ、作業台に走った。そこには当時最大の倍率を誇る顕微鏡が据えつけてある。男は体から出したばかりの白い液体をすばやく顕微鏡の下に置いて、レンズをのぞき込んだ。すると、小さなオタマジャクシのようなものが、長い尾をしならせて無数に泳いでいるのが見えた。

 織物商の名は、アントニ・ファン・レーウェンフック。アマチュア科学者でもあった彼は、自作の顕微鏡で湖の水やワインを観察しては、その中に無数の「微小動物」がいることを発見し、ロンドン王立協会に論文を提出していた。自分の精液についての論文では、「砂粒の大きさほどの範囲に、ときには1000匹以上もの」微小動物が含まれると書いている。

 顕微鏡を通して、それまで誰も見たことがなかった微小な世界をかいま見たレーウェンフック。ある日、タラの精巣を取り出して調べようとしていたとき、ふと疑問を抱いた。「地球には、どれくらいの数の人が住めるのだろう?」

 当時は国勢調査もほとんどなく、誰もそんなことを考えたことがなかった。レーウェンフックはまず、オランダの人口は100万人くらいだろうと推測した。それから地図を見て、地球上で人間が住んでいる地域の面積はオランダの国土の1万3385倍だと計算した。その上で、当時のオランダはすでに過密に近い状態になっていると思えたので、世界全体がオランダと同じ人口密度になるのが限界だろうと考えた。かくして彼は、地球上に住めるのは最高で133億8500万人だろうという結論を出した。人口生物学者のジョエル・コーエンの著書『新「人口論」』によると、これは地球がどれくらいの人口を支えられるかを推定した初めての試みだという。

 レーウェンフックの時代には、地球の人口はわずか5億人ほどだったと推測されている。それまでの1000年間にじわじわと増え続けてはいたが、ちょうどその時代から急増し始める。それから150年後、ヒトの卵細胞が発見されたころには、2倍に増えて10億人を突破。さらに1世紀後、1930年ごろには、再び2倍に増えて20億人に達した。

 その後の増加は驚異的だった。20世紀に入るまでは、一人の人間が生きている間に世界の人口が2倍に増えるなどということはなかった。しかし、いま生きている高齢者のなかには、一生の間に世界の人口が3倍に増えたのを目の当たりにした人たちがいる。国連人口部の推計によれば、2011年の後半には世界の人口が70億人に達するという。

 勢いは衰えつつあるとはいえ、人口の爆発的な増加はまだまだ終わらない。平均寿命が延びているだけでなく、出産可能な年齢にある女性が世界に18億人いるからだ。一人の女性が一生のうちに産む子供の数は一世代前と比べて減りつつあるが、女性の絶対数が多いため、少なくとも今後数十年は世界の人口は増え続けるだろう。2050年までには最大で105億人に達するとみられるが、一人の女性が産む子供の数がおよそ一人減れば、80億人で収まる。国連の人口統計チームは、その中間あたりになる可能性が高いとみて、おそらく2045年に90億人に達すると推計している。

 人口が今も年間8000万人のペースで増え続けている以上、危機感をもつなと言われても無理な話だ。すでに地下水の水位は下がり、土壌は流出し、氷河は解け、漁業資源は失われつつある。今も日常的に飢えに苦しむ人々が10億人近くいる。数十年後には、今より20億人も多くの人々が食料を必要とすることになる。しかもその大半が貧しい国々に暮らす。地球はそれだけの人間を支えられるだろうか。

なぜ人口爆発が起きるのか

 人類が長い間、人口過剰に危機感を抱いてきたという事実を知れば、少しは救いになるかもしれない。フランスの人口統計学者エルベ・ルブラによると、人類は増えすぎて滅亡するといった議論は昔から盛んになされてきたという。レーウェンフックが精子を発見した数年後には、ロンドン王立協会の創立者ウィリアム・ペティー卿が、約2000年後に「最後の審判」が下るという論文を書いている。そのときには、世界の人口が200億人を超え、地球が人類を支えられなくなって、「聖書に書かれた通り、戦争や大虐殺などさまざまな惨事が起きる」というのだ。

 宗教的な教えが影響力を失うにつれて、人口増加そのものが世界の終末をもたらすと恐れられるようになったと、ルブラは論じている。1798年に英国の聖職者で経済学者のトーマス・マルサスが『人口論』を発表し、食料生産の伸びは人口の増加に追いつかないという「マルサスの法則」を唱えた。人口は永遠に増え続けることはなく、やがて戦争や疫病、飢餓によって減っていくという法則だ。実際、ヨーロッパでは14世紀に黒死病(ペスト)が大流行して人口が激減している。ただ、歴史学者によれば、それ以降、世界の人口は一度も減少に転じたことがないという。

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