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特集

オオハクチョウ

DECEMBER 2010

文=キャシー・ニューマン 写真=ステファノ・ウンターティナー

2メートルを超える翼を広げ、冬の大空を舞うオオハクチョウ。その優雅で威厳に満ちた姿を、北海道やフィンランドでとらえた。

 白鳥の湖―ロシアの作曲家チャイコフスキーの音楽で知られるこのバレエの名作は、アヒルを主人公にしては生まれなかった。白い翼を広げて、大空を優雅に舞うハクチョウ。その中でも圧倒的な存在感を放つのが、オオハクチョウ(学名Cygnus cygnus)である。7種からなるハクチョウ属の基準種で、個体数は全世界でおよそ18万羽。この属の中では最も数が多く、抜群に広い生息域を誇っている。

 古代の人々にとって、ハクチョウは死を予感させるものでも、不死の願望を抱かせるものでもあったようだ。古代ギリシャの哲学者プラトンの記述によれば、その師であるソクラテスは自らの最期の日にハクチョウが歌うのを聞いたという。北欧神話では、戦場の女神ヴァルキュリアたちがハクチョウに姿を変えて、倒れた英雄たちを主神の宮殿ヴァルハラへ運んだとされる。

 ハクチョウは「世紀をまたいで自由に動き回り」、巡る季節の輪へ入っていく、と詠(うた)うのはロシアの詩人アンナ・アフマートヴァ。秋が訪れ、V字形に編隊を組んで越冬地へ向かうハクチョウは、詩人を物悲しくさせたのだろう。一方で、アンデルセンの童話「みにくいアヒルの子」のように、勇気を与えてくれる存在でもある。

 甘くも切ない、美しきハクチョウ。しかし、その愛らしさの裏には厳しい一面が隠れている。水かきの付いた足で必死に助走し、翼を激しくはばたかせてぎこちなく飛び立つのも、縄張りを守ろうと他の鳥を容赦なく攻撃し、ときに命を奪うのもまたハクチョウだ。美しさとは、我々が思っているほど、たやすくも優しくもないのだろう。

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