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特集

日本縦断
3つの海と魚たち

NOVEMBER 2010

文=ジュリ・バーウォルド 写真=ブライアン・スケリー

床で流氷に出合い、富山湾でホタルイカの放つ光に酔いしれ、小笠原諸島で熱帯魚とたわむれる。日本の海の多彩な姿をとらえた。

日本縦断 3つの海と魚たち
写真家のブライアン・スケリーが、本誌特集記事の撮影方法や撮影機材などについて語る。

動画翻訳

今回の特集のような仕事はすべてをささげる作業になります
一日に18時間仕事をする日々が続き
アシスタントを務めてくれる大事な人々と一緒に働きます
そして 船にはたくさんの機材を積みこみます
ブライアン・スケリー(写真家)
世界の水中写真のレベルは過去数十年で 非常に高くなりました
今回の「ナショナル ジオグラフィック」誌の日本の海の特集のような仕事をする場合
さらにレベルを引き上げなくてはならないと強く感じます
今までに誰も見たことがないような写真を撮りたいんです
そして人とは少し違う方法で撮影したいと思っています

高性能の35ミリデジタルカメラを使うだけでなく
さまざまな照明を使います
水中写真家には多くの場合 制限があります
たいていは カメラに1つか2つストロボをつけるだけです
しかし私には多少のぜいたくが許されています
ある程度 時間をかけることができますし優秀な人々が一緒に働いてくれます
撮影には 時間がかかるだけでなくたくさんの機材が必要になります
ときには 7つや9つもの照明を使って撮影する写真もありますし
重要な場所では 数人がかりで7つのストロボを持ってもらうこともあります
また ホットライトをいくつか持ちこむなどさまざまな機材を使います
そして 潜水と潜水の合間にはパソコン上で写真を見直し 調整するのです
水中のスタジオのようなものですね
このような努力を積み重ねることで物語を語り 読者に海の大切さを伝え――
彼らを それまで見たこともなかった世界へと連れて行くことができるのです

 氷のすき間から陽光が降り注ぐ。藻類のすみついた氷塊が、エメラルド色に輝く。そこに姿を見せるのは、冷たい海の住民たち。半透明のクリオネ、扇子のようなひれをもつカジカ、オレンジ色をしたダンゴウオはまるでポケモンのアニメから飛び出してきたかのようだ。

 ここは北海道知床、羅臼町。写真家ブライアン・スケリーは、カメラを手にそんな氷の下の世界へ潜っていった。

 大小合わせて6000以上の島々が、3000キロにわたって細長く伸びる日本。その海には、少なくとも3種類の生態系が息づいている。北の寒冷な知床半島沖では、流氷を浮かべた海にタラバガニやトドが姿を現す。日本列島の中ほど、富山湾や伊豆半島といった温暖な海域では、ホタルイカの群れやソフトコーラル(軟質サンゴ)の森が豊かに育つ。さらに東京都心から1000キロ南へ下った小笠原諸島では、繊細なチョウチョウウオの一種ユウゼンや大型のサメ「シロワニ」が、サンゴ礁でむつまじく暮らしている。

 そんな多様な海洋生物を育む源泉となっているのが海流だ。それは、-1℃から+30℃まで変化に富んだ海域をもたらすのと同時に、二つの世界記録をもたらしてくれる。一つは、温かい黒潮(日本海流)が生んだ最北端のサンゴ礁。もう一つは、冷たい東樺太海流が冬の知床半島に送り込む世界最南端の流氷だ。海流はこうして海水温を左右するだけではない。遠方からさまざまな海洋生物も運んでくる。

 ただし、世界中のほかの海と同様、日本近海の生態系も危険にさらされている。海辺の開発や環境の悪化が原因で、藻場や干潟、サンゴ礁が減りつつあるからだ。魚やカニ、サンゴの幼生などを育むそれら「海のゆりかご」がなくなれば、生き物たちは落ち着き場所を見つけられずに素通りせざるを得ない。

 凍てつく海から上がった写真家スケリーは、浜辺に休憩所があることに大いに感謝した。ダイビングギアをはずし、床に座って雪が降るのを眺めながら、味噌汁をすすった。

 海ではオレンジ色のダンゴウオが泳ぎ、氷はエメラルド色に輝いている。日本の海は豊かだ。少なくとも今のところは。

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