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特集

精妙なる昆虫の卵

OCTOBER 2010

文=ロブ・ダン 写真=マルティン・オエゲルリ

億年も前から生命をつないできた昆虫。その卵は、過酷な環境や外敵から子孫を守る工夫が巧みに施された、知恵の結晶だ。

 私たち人間は、自分たちこそが地球の主だと思いがちだが、実のところ、この惑星は昆虫たちのものだ。私たちが知っている昆虫はまだほんの一部で、試しに朽木を裏返せば、新種の昆虫が見つかるだろう。その姿かたちは種によってさまざまで、人間の目には、あたかも地球外生命体のように異様に映るが、数の点から考えれば、私たち人間こそが稀(まれ)な存在といえよう。太古の昔から、巨大な脊椎動物が出現しては滅んだ一方で、昆虫は交尾をしては卵を産み、あらゆる場所で繁栄を続けてきた。“恐竜の時代”や“哺乳類の時代”とは、私たちがよく使う言葉だが、冷静に考えれば、あらゆる時代が“昆虫の時代”でもあったのだ。

 昆虫が繁栄を続けてきた理由は、ある程度まで分かっている。地球上に最初に出現した動物たちは、子どもを世話し、育てた。その子孫である鳥類や爬虫類、哺乳類は、現在も子どもに食べ物を与え、外敵から身を守ってやる。ところが、昆虫の大半が、太古以来のこの習性を捨て、新たな時代に適応してきたのだ。

 昆虫は進化の過程で、硬い殻に覆われた卵を産むようになり、産卵管と呼ばれる特殊な器官を発達させていく。この産卵管を地中に差し入れ、卵を産みつける昆虫もいる。地面の石を持ち上げたり、木片を割ってみれば、こうした昆虫たちが産みつけた卵が見つかるだろう。しかし、卵が見つかるのはそうした場所だけではない。鳥は巣づくりに最適の場所を懸命に探すが、昆虫の場合、樹木や木の葉、地中、水中、さらにはほかの生物の体内など、あらゆる場所が子どもを育てる“育児室”となる。昆虫が現在のような多様性を獲得し、地球上で繁栄できるようになった理由がここにあるのだ。

 初期の昆虫の卵は、単純な構造で、柔らかくて丸い形をしていた。しかしその後、3億年の間に、多様化する生息域に合わせて、卵も多様な形態を獲得することとなる。土の粒のような卵もあれば、植物かと見まがう卵もある。こうした卵を見つけても、最初はそれが昆虫の卵だとは気づかないだろう。卵の形態はどれも実に奇抜で、さまざまな装飾物や付属物で飾られている。水面まで延びた長い管で呼吸をする卵もあれば、絹糸のようにつややかな植物の茎からぶら下がっている卵もある。さらに、風に飛ばされたり、ハエの背に乗っかって移動する卵もある。明るい青緑色から濃い青灰色、琥珀(こはく)色など、卵の色は多彩だ。また、とげ状の突起や渦巻き模様、縞(しま)模様などで覆われた卵も多く見られる。

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