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特集

巨獣はなぜ消えた?

OCTOBER 2010

イラスト=アドリー・ケニス、アルフォンス・ケニス 文=ジョエル・アッケンバーク 写真=エイミー・トンシング

つてオーストラリアに生息した大型動物の多くが、数万年前に姿を消した。絶滅の原因は氷河期の到来か? それとも人間か?

 オーストラリア南部の都市アデレードから南極海に向かって車を走らせること4時間。見えてきたのは、一面のブドウ畑だった。

 ワインの産地として知られる美しい田園地帯だが、油断は禁物。ブドウの木々が育つ赤土の下には「ナラコート洞窟(どうくつ)」と呼ばれる洞窟群が分布し、地表のいたるところに、暗黒の地底につながる深い「落とし穴」があるからだ。ここは世界遺産にも指定された観光名所だが、夜になるとカンガルーが穴に落ちて死ぬことが多い危険な場所でもある。

 1969年のある日、ロッド・ウェルズという化石ハンターの青年が、5、6人の仲間とともにナラコートの洞窟群の一つ、ビクトリア洞窟の探検にやってきた。階段や手すり、照明も完備した昔からの観光スポットだ。だがウェルズたちは観光客が立ち入らない区域に忍びこみ、狭くて真っ暗な横穴を手探りで進んだ。

 土砂のすきまから、風がかすかに吹きこむ。先には大きな空間が広がっているはずだ、とウェルズは考えた。そして仲間の一人と腹ばいになって進んでいくと、やがて広々とした空間に出た。地面は赤土に覆われているが、何か様子がおかしい。奇妙な形のものが散乱している。しばらくしてウェルズは、それが大量の骨であることに気づいた。そこは、落とし穴にはまった数々の動物たちの“墓場”だったのだ。

 現在ビクトリア化石洞窟と呼ばれるこの洞窟には、およそ4万5000頭の動物の骨が眠っている。これらは、更新世(260万~1万年前)のある時期にオーストラリア大陸を闊歩(かっぽ)し、絶滅した大型動物で、最古級の骨のなかには、オーストラリアに現存する動物よりもはるかに大きい動物のものもある。

 これまでオーストラリア各地では、ヒョウほどの大きさの肉食動物ティラコレオ(フクロライオン)、サイ並みの大きさがある有袋類ディプロトドン、体高2メートルのカンガルー、大型のヘビや飛べない巨鳥の化石が見つかっている。ほかにも、バクに似た動物や、体長6メートルのオオトカゲがいたことも確認されている。

 こうした大型動物は生態系の支配者だったにもかかわらず、ある時期に姿を消した。残ったのは体重45キロ以下の小型の動物がほとんどだ。なぜ大型動物は絶滅したのだろうか?

 大型動物は米国にもいた。マンモス、ラクダ、顔が短いクマの仲間アルクトドゥス、巨大なアルマジロ、長い牙をもつネコ科動物スミロドンなどだ。しかし人類が到来してまもない1万3000年前に、どれも姿を消してしまった。その原因に関して、古生態学者のポール・マーティンが1960年代に仮説を立てている。北米と南米に進出した現生人類が、とがった石を先端につけた槍(やり)で大型動物を狩り、過剰に殺して絶滅に追いこんだという「過剰殺戮(さつりく)説」だ。

 しかしすべての動物が根絶やしにされたわけではない。北米ではシカやプロングホーン、アメリカグマ、小型のバイソンが生き残り、新たに入ってきたエルクやヘラジカが生息域を広げていった。南米ではジャガーとラマが残った。

 現在のオーストラリアで、陸生動物の固有種のうち最大のものはアカカンガルーである。

 オーストラリアの大型動物に何が起こったのか―。それは古生物学者を悩ませる特に大きな謎の一つだ。これまでは、気候変動が原因だとする見方が主流だった。確かにオーストラリア大陸は100万年以上前から乾燥が進み、植生が減っている。そんな環境に、大型動物は耐えられなかったのかもしれない。

 だが、オーストラリアの古生物学者ティム・フラナリーは、約5万年前に人類が上陸し、狩りに火を使うようになったことも影響していると推測する。森林が焼き払われて減少し、水循環が断ち切られたというのだ。

 フラナリーによれば、現時点で確実に言えるのは次のようなことだ。およそ4万6000年前、オーストラリアを支配していた陸生動物に突然何かが起こった(どう「突然」なのかは議論が分かれるが)。それは高い知能をもち、道具を使う「敵」が来てまもないころだった……。

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