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特集

シリーズ 地球と、
生きる
「魚を食べる」を考える

OCTOBER 2010

文=ポール・グリーンバーグ

界の漁獲量は増える一方。今のやり方で漁を続ければ、水産資源が枯渇し、漁業という産業自体が成り立たなくなるおそれが出てきた。

 夜明け前、ハワイ・ホノルル湾のそばにある卸売会社の倉庫で、“魚介類の国際会議”が幕を開ける。やってきた20人ほどの仲買人は、屋内の冷気に備えてアロハシャツの上に冬物のパーカーを羽織っている。彼らは携帯電話を取り出すと、東京やロサンゼルス、ホノルルなどを呼び出した。高価な魚がお目当ての世界中のクライアントから指示を待つのだ。

 ほどなく海に面した巨大な扉が開き、パレットに乗った魚のパレードが始まる。胴体が車のタイヤほどもありそうなマグロ。とがった口先を切り落とされ、ずらりと並んだカジキ。金色に縁取られた目と厚い唇をもつアカマンボウ。それぞれが、倉庫の一角を陣取っていく。

 競り人が魚の肉を筒状にえぐり出し、生気のなくなった白い腹に乗せる。仲買人はその肉を手に取り、色、つや、脂肪の具合から品質を占う。携帯電話から指示が入ると、仲買人は不可解な手の動きで、競り人に値を伝える。暗号のような文字を手書きした紙片が、魚の腹にピシャリと張り付けられると、それで売買成立だ。こうして太平洋北中部の豊かな資源は、世界中の金持ちたちの手で山分けされていく。

海への影響を数値化

 今、世界の海では、年間に7700万トンを上回る“野生の”魚や甲殻類が捕られている。この膨大な数字について、漁業関係者はここ10年以上おおむね安定していると考えている。だがカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学の水産学者ダニエル・ポーリーに言わせれば、漁獲は安定してもいなければ、各国の間で公平に分配されてもいない。そのことを示しているのが、ポーリーがナショナル ジオグラフィック協会フェローのエンリック・サラと共同で実施する調査プロジェクト「シーフード・プリント」だ(このプロジェクトはピュー慈善財団とナショナル ジオグラフィック協会が支援している)。

 ポーリーたちは、ありがちな誤解を正すことから始めるつもりだ。人々は、ある国が海に与える影響を、その国の漁獲量で考えようとする。しかし、それでは人間が海の生態系に及ぼす真の影響は見えてこない。「問題は、海に与える影響は魚ごとに違うということです。1キロのマグロは、1キロのイワシのおよそ100倍もの影響を与えるのです」と、ポーリーは言う。

 これほどの差が生じるのは、マグロが最上位の捕食者であるためだ。彼らは食物連鎖の頂点に立ち、サバのような中位の捕食者を含め大量の魚を食べる。そのサバは小魚を食べ、小魚は微小な動物プランクトンなどを食べる。大型のマグロは自分の体重に匹敵する量の食物を、わずか10日間でたいらげる。つまり、体重450キロのマグロなら、年に1万5000匹もの小型の魚を食べることになるのだ。ほかにも世界には、それぞれの海にメカジキやアオザメなどを頂点とする食物連鎖が成立している。

 一国がどれだけ海の資源を消費しているかを正確にとらえるには、あらゆる種類の漁獲を比較する統一基準が必要だ。「シーフード・プリント」の研究者たちは、それぞれの魚が1キロ成長するのに必要な「一次生産者」(食物連鎖の底辺にいて、光合成を行う植物プランクトンや海藻など)の量で、これを計算することにした。たとえば1キロのクロマグロは、1000キロ以上の一次生産者に換算される。

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