/2010年9月号

トップ > マガジン > 2010年9月号 > 特集:ウナギの不思議


定期購読

ナショジオクイズ

頭蓋骨の解析データに基づいてCGで再現されたこの男性、誰でしょう?

  • ソロモン王
  • アダム
  • イエス・キリスト

答えを見る

ナショジオとつながる

週2回
配信

メールマガジン無料登録

メルマガ登録の詳細はこちら



特集

ウナギの不思議

SEPTEMBER 2010

文=ジェームズ・プロセック 写真=デビッド・デュビレ

に包まれていたウナギの生態が解明されるにつれ、世界各地で数が減っている現実も見えてきた。完全養殖はその解決策となるか。

 子供の頃、ウナギに出合う機会といえば、クロスワード・パズルでその名前が出てくるくらいで(ウナギは英語で“eel”だ)、私が住んでいた米国コネティカット州の自然の中で見かけることはまれだった。それでも、友達と釣りに出かけて、たまたま本物のウナギを捕まえることもあった。その姿はとても奇妙で、どの生き物の仲間に分類できるのか見当もつかなかった。「ひょっとするとヘビの仲間?」

 そう言いながらも、私たちは恐ろしくてウナギの口から釣り針をなかなか外せなかった。ある日、近くで釣りをしていた老人が、ウナギは魚の仲間だと教えてくれた。それが本当なら、とびきりユニークな魚だと思った。

 その後の人生で、ウナギの存在に気を留めることはほとんどなかった。だが6年前、再び出合うこととなる。11月のある寒い日、ニューヨーク州キャッツキルの山間部を車で移動中、「デラウェア川の珍味―薫製小屋」という看板を見つけ、そこへ行ってみることにした。

 未舗装の曲がりくねった道路を下って、暗い針葉樹の森を抜けると、銀色の煙突を持つ薫製小屋が見えてきた。デラウェア川の源流を見下ろす小高い土手に、へばりつくようにして建っている。小屋のドアから、髪の毛を一つに結び、白いあごひげを生やした男が出てきた。

 レイ・ターナーという名のその男は、ウナギのようにつかみどころがなく、生命力があり、少し謎めいていた。ターナーは毎年、川の水位が下がる夏になると、ウナギの川下りに備えて「やな」をきれいに手入れする。石垣でできたやなはV字形をしていて、中央には木製の棚がある。この中央部分に水を集めて、やってきた魚を捕らえるのだ。

 成長したウナギは9月の二晩だけ、新月の暗い夜に川を下り、外洋を目指す。この川下りは、嵐で洪水が起きた時とも一致することが多い。空が最も暗く、川が最も増水するタイミングだ。

 私たちは薫製小屋のそばからカヌーに乗り、上流のやなへ向かった。「やつがいる」。ターナーが指さす先を見ると、ハクトウワシが低空を旋回しながら木棚をじっと狙っていた。ターナーより先に魚をかっさらうつもりのようだ。

 ウナギが川を下るこの時期、ターナーは多い時で2500匹のウナギを捕らえると言う。「毎年、いちばん大きな雌は川に戻してやります」。そのウナギが本当に雌だった場合、海に出て3000万個もの卵を産むからだ。

 ターナーは、捕らえたウナギを高温の煙でいぶし、車で通りがかった客に売ったり、レストランや小売店に卸す。稼ぎは最大で年間約2万ドル。「ウナギはうちの商品の中で最高のたんぱく源です。とても独特な風味の魚で、リンゴの木の薪(まき)を燃やしていぶすと、ウナギを漬けておいたハチミツの香りがわずかに残ります」

1Next

年間購読のお申込はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー