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特集

野生の王国
カジランガ

August 2010

文=ダグラス・H・チャドウィック 写真=スティーブ・ウィンター

ラやインドサイなど希少な野生動物の宝庫、カジランガ国立公園。ヒマラヤ山脈の麓(ふもと)に広がる草原を訪れ、動物たちの素顔に出合った。

 インド北東部の大草原に広がるカジランガ国立公園。

 ここに暮らすインドサイ(学名 Rhinoceros unicornis)は、全身を分厚い皮膚の鎧(よろい)で固め、頭には角が一本あり、体重は2トン前後にもなる。かつてはパキスタンからミャンマーにかけて数多く生息していたが、現在は2700頭を下回る。最新の報告では、そのうち約2000頭がカジランガ国立公園に生息しているという。

 公園の面積は860平方キロ。北部には80キロにわたってブラフマプトラ川が流れ、いくつもの砂州が形成されている。川の北側にも保護区があるが、南側の氾濫(はんらん)原が公園の大半を占める。川の面積を除くと、1平方キロ当たり4頭のインドサイが生息している計算になる。

 100年前、公園のあるアッサム州に生息するインドサイの数は200頭に満たなかった。生息地となる肥沃(ひよく)な流域の大半は農地として失われ、角目当ての密猟も横行していたのだ。

 1908年、インド政府はサイを守るため、カジランガの一帯を保護区に指定した。当初、区域内に生息していたサイは、わずか12頭ほどだったとされる。その後、保護区は徐々に拡大し、74年には国立公園となり、85年にはユネスコの世界遺産に登録された。90年代後半には再び拡張され、2倍の面積になった。現在、カジランガ国立公園はアジア随一のインドサイ保護区となり、ここからサイを別の保護区へ移して繁殖させる試みも行われている。カジランガがインドサイの未来を握っていると言える。

 自然保護という点で、カジランガは輝かしい成功を収めている。公園内にはインドサイのほか、アジアゾウ1300頭、スイギュウ1800頭(世界最大の個体群だ)、ホッグジカ9000頭、バラシンガジカ800頭、サンバー(シカの仲間)数十頭、イノシシ数百頭が生息している。

 公園には獲物となる動物が山といるが、ここにはタイリクオオカミもドール(アカオオカミ)もいない。カジランガのナマケグマが食べるのはシロアリや植物だし、ヒョウが狩りをするのは公園周辺の丘陵に広がる森林地帯だ。ホッグジカが警戒して鼻を鳴らし、スイギュウが一斉に三日月形の角を上げて草原の一点を見つめる時、そこにいるのは十中八九、大きな前足をもつ縞模様の猛獣、トラだ。

 取材中、シカたちの尾が一斉にピンと立った。干上がりかけた湖のほとりに、いつの間にか1頭のトラが忍び寄っていたのだ。トラと私の距離はわずか数メートルだが、トラの姿は見えない。地面のほうを向いていた私の視界に最初に飛び込んできたのは脚だった。すると、体重230キロの巨体が、群れのなかで最も背の高いシカに飛びかかろうとした。次の瞬間、両者は視界から消えた。

 森林伐採と密猟によって、この25年間でインドのトラの大半が姿を消したが、カジランガ国立公園では順調に繁殖しているようだ。現在、約100頭のトラが生息していて、個体群の密度が世界で最も高いと言われている。

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