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特集

シリーズ
地球と、生きる
売られる野生動物

JANUARY 2010

文=ブライアン・クリスティ 写真=マーク・レオン

ット、食材、伝統薬など、さまざまな目的で売られる野生動物。アジアで闇市場を牛耳る人物に接触し、違法取引の実態を暴く。

 1998年9月14日、眼鏡をかけたやせ形の男が、日本航空012便でメキシコシティ国際空港に降り立った。男はマレーシア人のワン・ケン・リアン。絶滅が危惧される爬虫類(はちゅうるい)など希少な野生生物の密輸で世界に悪名をとどろかせている人物で、密輸業界や各国の取り締まり当局の間では、アンソンの名で知られている。

 その彼を出迎えたのは、野生生物の取引業者に成りすましたジョージ・モリソン。米国内務省魚類野生生物局の捜査官で、精鋭5人から成る特別捜査チームを率いて、5年間おとり捜査を続けてきた。アンソンは逮捕されると、ただちに手錠をかけられ、メキシコ連邦警察に連行されていった。

 モリソンら捜査官にとって、アンソンの逮捕は長年の悲願だった。オーストラリア、カナダ、メキシコ、ニュージーランド、米国の捜査当局の協力で、ようやく逮捕にこぎつけた。この捜査は、野生生物の国際取り締まりの最大の成功例として今も語られている。

 野生生物にかかわる犯罪は長い間、世界の多くの国で重罪とは考えられてこなかった。米国の連邦検察当局は、野生生物の密輸はれっきとした犯罪であることを世界に知らしめるため、何としてもアンソンを有罪にしなければならないと考えた。その結果アンソンは、米国で野生生物の取引を規制する「レーシー法」の違反だけでなく、共謀、密輸、資金洗浄の容疑でも起訴された。

 米国への引き渡しに2年近く抵抗を続けたアンソンだが、最終的に司法取引に応じた。彼が認めた罪状は、最高で懲役250年、罰金約11億円に相当する。2001年6月7日、アンソンは米国連邦刑務所での懲役5年11カ月(うち2年10カ月は服役済みの扱い)と罰金約540万円の刑が言い渡され、さらに出所後3年間は米国内での動物の販売が一切禁止された。

 だが売買禁止は、現実には何の意味もなかった。アンソンが逮捕されてすぐ、彼の妻のチア・ビン・シーは新会社を立ちあげ、アンソンの服役中に米国への野生生物輸出を始めた。さらにアンソンの事業の中核であるスンガイ・ルサ・ワイルドライフ社は、禁止措置にもかかわらず、依然として取引を続けていたのだった。

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