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特集

中国の火薬庫 ウイグル

DECEMBER 2009

文=マシュー・ティーグ 写真=キャロリン・ドレイク

年7月、中国の新疆ウイグル自治区で起こったウイグル族による大規模な暴動。その背景にある、漢民族との根深い対立とは。

 新疆ウイグル自治区の首府ウルムチ。月曜日に私が足を踏みいれたとき、町はのどかな印象すら覚えた。1週間前、この町でウイグル族の暴動が起こって200人近い死者が出たばかりだというのが嘘のようだった。20年前に北京の天安門広場で民主化を求めるデモ隊に軍が発砲し、多くの死傷者が出た天安門事件以来の大規模騒乱だ。中国政府は数万人規模の治安部隊をウルムチに投入し、漢民族とウイグル族で構成される町の秩序を回復しようとした。中国の人口の大半を占めるのは漢族だが、中央アジアに暮らし、トルコ語に近い言葉を話すウイグル族は、西の国境地帯は自分たちの父祖の土地だと主張する。

 ウルムチのウイグル族地区では、暴動鎮圧用の装備に身を固め、自動小銃を持った兵士があらゆる通りにずらりと立っていた。聞こえてくるのは、市場を行き来する街宣車から流れる民族融和の宣伝だけだ。この日ウルムチは一触即発の不穏な状態だったのかもしれないが、町は静寂に包まれていた。

 ウイグル族の大多数はイスラム教徒であるムスリムだ。正午近く、私は大きなモスクのそばにいた。この中に何人いるのだろう? そんな疑問が届いたかのように、建物から何百人という信者が勢いよく吐きだされた。人びとはあっというまにどこかへ消えた。

 続いて棒のようなものを持った3人の男性がモスクから出てきた。それぞれ青、黒、白のシャツを着ている。笑いながら何ごとか叫び、浮かれているようにも見える。そんなことはやめろと沿道から制止の声がかかるのもかまわず、3人は棒を振りかざして大股で歩いていく。

 2ブロックほど進んだ彼らは、私のすぐ目の前でくるりと向きを変え、通りを渡った。手に持っているのは、どうやら錆びついた刀のようだ。

 通りを横断した3人は、武装した治安部隊の一団に向かって急に駆けだした。先頭を行くのは青いシャツの男だ。不意を突かれた兵士たちはきびすを返して逃げようとした。ところが次の瞬間、一発の銃声が響いた。それでもウイグル族の3人は少しもひるむことなく、前のめりになって銃口に向かっていった。

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