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特集

シリーズ 地球のいのち
シロナガスクジラ

JULY 2009

文=ケネス・ブラウワー 写真=フリップ・ニクリン

球で最も大きな動物、シロナガスクジラ。中米コスタリカ沖での3週間の学術調査に密着して、その驚くべき生態に迫った。

 太平洋に面したメキシコ南部のアカプルコ港。豪華な白いヨットがひしめく港にあって、学術調査船パシフィック・ストーム号の黒い船体はひときわ目立っていた。全長は26メートルで、かつてはトロール船だったが、今ではシロナガスクジラの学術調査に利用されている。今回、私と写真家のフリップ・ニクリンは、その調査に同行させてもらえるというわけだ。荷物を運び込みながら、私の胸は久しぶりの船上生活にときめいていた。

 人はどんなときに海に出るのか-ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』の語り手ならば、「口を不機嫌そうに曲げている自分に気づいたときや、心に11月の湿っぽい糠雨が降るとき」だと言うところだが、私ならそこに「人工的な照明の下で、コンピューターに向かう生活が何カ月も続いてしまったとき」という一節をつけ加えたい。一刻も早く海に出なければと思っていた私は、この取材の申し出に飛びついた。

 折しも出航予定日は1月3日だったから、私は次のような新年の誓いを立てた。
 一、船上ではよき乗組員であること。
 一、文章から余分な贅肉をとること。
 一、『白鯨』からの引用はしないこと。

 ところで、今回は“白鯨”の追跡も楽しみにしている。調査チームが追っているシロナガスクジラの群れの中に、白い個体が1頭いるのだ(通常の個体は明るい青灰色)。4カ月前、チームは米国カリフォルニア州のサンタバーバラ沖でそのクジラに発信器をつけ、4172番という識別番号を与えて、人工衛星で追跡し始めた。だが、わずか数週間後に信号は途絶えてしまった。この“白鯨”にも会えるといいのだが。

 私たちを乗せて、パシフィック・ストーム号が出航した。沿岸の強風を避けるため、まずはアカプルコから南へ進路を取り、しばらく行ってから向きを変える。めざすのは、シロナガスクジラが集まる「コスタリカ・ドーム」がある海域だ。

 コスタリカ・ドームは、陸から太平洋に向けて吹き出す風と海流が出合うことによって、栄養豊富な冷たい深層水が湧き上がる湧昇域だ。そこでは、深海の冷たい水が海面下10メートルほどまで押し上げられて、浅い海中に深層水の“ドーム”が形成されている。その位置は一定ではないが、コスタリカのおよそ500~800キロ沖にあることが多い。

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