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特集

シリーズ 地球のいのち
オサガメ

MAY 2009

文=ティム・アペンゼラー 写真=ブライアン・スケリー

ミガメでは世界最大のオサガメ。行動範囲の広さを武器に、1億年も生きてきた。その知られざる生態と保護の現状を追う。

 謎の生き物が水揚げされた-1961年の夏の終わり、カナダ東部ノバスコシア州の生物学者シャーマン・ブリークニーのもとに、こんな知らせが舞いこんだ。さっそく現場である州都ハリファクスの港に駆けつけてみると、野次馬に囲まれて、大きな黒いウミガメがあおむけに横たわっていた。背はゴムのように弾力がある皮膚で覆われ、翼のように大きな前脚と、砲弾のように円錐形をした頭部が特徴だ。重さは400キロもあった。

 これはウミガメの最大種であるオサガメに違いない、とブリークニーは思った。だが、オサガメは熱帯にすむ生き物のはずだ。

 地元の漁師たちに聞くと、カナダ沖の大西洋ではこのカメをよく見かけるという。夏の終わりは「カメの季節」と呼ばれているほどだ。

 死んだオサガメを何匹か調べてみると、熱帯から来たことは明らかだった。1匹は熱帯に生えるマングローブの枝が目に刺さっていたし、残りは暖かい海にすむフジツボが付着していたからだ。一般にウミガメは、カナダ東部のこの海域では生きられない。だがオサガメは回遊してきて、元気に泳ぎまわっている。そこでブリークニーは、1965年にこう結論づけた。「熱帯で生まれたカメが、大西洋沿岸の冷たい海域まで毎年遠征してきている」

 さらに驚いたのは胃の中身だ。巨大な胃袋には、かみ砕かれたクラゲが、毒のある触手も含めて詰まっていた。食道は、長さ7センチのとげが奥に向かってびっしり生え、つるつるしたクラゲをしっかり飲みこめるようになっている。

 ハリファクスの港でオサガメを見たときの衝撃はいまだに忘れられないと、ブリークニーは言う。「あのときは本当にたまげました。あれほど大きな爬虫類が、凍りつくような海のなかで、クラゲを食べて生きているなんて」

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