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特集

古代エジプト
男装の女王

APRIL 2009

文=チップ・ブラウン 写真=ケネス・ギャレット

21年にわたり、男の格好で古代エジプトを治めたハトシェプスト女王。王家の谷で100年以上前に発見されたミイラが、真実を語り始めた。

 醜く突きだした上唇。黒い樹脂で満たされた二つの眼窩(がんか)。丸めた布が詰めこまれた鼻孔はなんとも見苦しく、左耳はつぶれて頭蓋(ずがい)に張りつき、髪の毛はほとんど残っていない。

 私はカイロのエジプト博物館で、ふたをはずした展示ケースに身を乗りだすようにして、そのミイラを見つめていた。紀元前1479~1458年にエジプトを支配した女性のファラオ、ハトシェプストの遺体と推定されているミイラだ。ハトシェプストは、古代エジプトの黄金期である新王国第18王朝時代に君臨した。現在ではその事実よりも、みずからを男性の王として描かせたことでよく知られている。

 このひからびたミイラが、「見上げるその人は、何にもまして美しい」とかつてたたえられた偉大な支配者だと言われても、にわかには信じがたい。唯一人間らしさを感じさせるのは、爪を失った指先だ。皮膚が縮んで、骨がむきだしになっている。その骨が光を浴びて、まるでマニキュアを塗った爪のように輝いている。きっと生前は美しく身を飾っていたのだろう。命のはかなさも感じさせるその指が、かろうじて血の通った女性の面影をほうふつとさせる。

 2007年夏、このミイラがハトシェプストであると判明したというニュースが、大きく報道された。それとともに、発見から特定にいたるまでの物語も少しずつ明らかになってきた。

 ハトシェプストの石棺が見つかったのは、今から100年以上前の1903年のことだ。発見者は、ツタンカーメンの墓を発見したことで知られる考古学者ハワード・カーター。場所は、王家の谷の第20号墓であるKV20だ。

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