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シリーズ
地球のいのち
ジャガーの大回廊

MARCH 2009

文=メル・ホワイト

南米にすむヒョウの仲間、ジャガー。個体数の減少を食い止めるため、生息地どうしをつなぐ“道”を守る取り組みが始まった。

 ある日の夕暮れ、中米コスタリカの森の奥で1頭のジャガーが眠りから覚めた。若い雄だ。やがてこの雄は大きく伸びをすると、生まれ故郷の森に別れを告げ、二度と戻らない旅に出た。

 森には身を隠す場所があり、小型のシカやイノシシに似たペッカリー、アグーチ(ウサギ大のげっ歯類)といった獲物となる動物がたくさんいる。繁殖の相手となりそうな雌の気配も感じられる。だがここには、森や雌たちの支配者を自任する、成熟した別の雄も暮らしていて、ライバルの存在を許してはくれない。

 そよ風が、若い雄のもとに母親のにおいを運んでくる。幼い頃は安心感を与えてくれたこのにおいも、もはや故郷にとどまる動機にはならない。だから、旅に出るのだ。

 ところが、進む方向を間違えてしまったようだ。わずか数キロ行ったところで森は途切れ、その先にはコーヒー農園が広がっていた。

 若い雄のジャガーは、本能に突き動かされ、農園のフェンスや渓流に沿って広がる木立に身を隠しながら、やむなく前進を続けた。だが間もなく、人目を避けられる場所は、まばらに点在するやぶとわずかな樹木だけになっていった。こんな土地では野生の獲物など見つからない。ジャガーはいつしか牧場地帯に迷い込んだ。そしてある夜、飢えと生まれたばかりの子牛のにおいに耐えきれなくなり、見通しのよい場所にその身をさらした。じりじりと獲物ににじり寄ってから、一気に飛びかかり、強力なあごの一撃で子牛の命を奪った。

 翌日、子牛の死骸とジャガーの残した痕跡を発見した牧場主は、近所の住民に声をかけ、猟犬を集めた。やがてハンターたちはジャガーを見つけた。だが、武器として散弾銃しか携えていなかった男たちはおじけづき、間合いを十分に詰めきらないうちに発砲した。ジャガーは分厚い頭骨のおかげで死を免れたが、銃弾が当たって片目が失明し、左前足の骨が砕け散った。

 手負いの雄はもはや、森で獲物を見つけることも、忍び寄って一撃でしとめることもできない。やがて飢えに耐えかねて、手っ取り早い獲物を狙いはじめた。近隣の牧場で別の子牛を襲い、さらに近くの町のはずれで犬を殺したのだ。だが、このときは引きあげるのが遅すぎた。雄ジャガーは、犬の遠吠えに気づいた村人たちに追い立てられ、木の上に逃げたが、多数の銃弾を浴びて絶命した。ジャガーは牛や犬を襲う害獣にほかならず、見かけたらすぐに射殺すべきだと、地元の住民たちは言う。

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