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特集

世界遺産 九寨溝
神秘の谷へ

MARCH 2009

写真=マイケル・ヤマシタ

国四川省北部の自然保護区、九寨溝。大小100以上の湖沼や川が織りなす原初の風景に、写真家マイケル・ヤマシタが出合った。

 九寨溝とは「九つの村がある谷」という意味だ。しかし、この谷では現在、村の数ではなく、ほかのさまざまな数字がより重要になっている。中国中央部の岷山山脈に位置する九寨溝は、長さ30キロのY字型をした渓谷で、入り口には80軒ほどのホテルが軒を連ねている。

 そこで待ち受ける280台のバスは、1日に1万8000人あまりの観光客を乗せて、風光明媚なルートを往復する。バスに乗り込んだ彼らは、鮮やかな色彩を放つ細長い湖や、幾筋もの細い流れが落ちる滝を車窓から眺め、カエデやトウヒ、竹の林が混在する山々を見上げることになるだろう。どこか神秘的なこの谷へは、気象条件さえ整えば、四川省の省都である成都から空路で40分ほどしかかからない。中国の長い歴史を通じて、幾度も都が置かれ、歴史的な遺産が数多く残る成都こそ、九寨溝への出発地点なのだ。

 点在する色とりどりの湖沼やヨシが生える渓流には、板張りの遊歩道が巡らされている。バスを降りた観光客たちは思い思いのペースでそこを散策し、再び別のバスをつかまえては旅を続けることになる。

 九寨溝は氷河に刻まれた峡谷だ。則査窪溝と日則溝という二つの谷が、やがて、樹正溝と呼ばれる一つの谷になり、北上していく。最高地点は標高3000メートルほどで、そそり立つ斜面は気楽に登れるようなものではないが、谷底を流れる、石灰質を含んだ渓流の美しさが目に入らないほど急峻というほどでもない。チベット高原に位置するこの一帯はかつて海底だったため、石灰岩が堆積していて、石灰質を含む水は、光の加減によって、エメラルドやトルコ石の色に輝いたり、紺碧の空を映したりする。

 湖沼は渓流が雪崩によってせき止められて生まれたが、昔の人は、湖水が神秘的な色をしている理由をこう解釈した。天空にすまう女神が化粧品を落としたからだとか、人魚が泳いだために色が変わったといったものだ。また、湖底に沈殿した炭酸カルシウムが、時として、眠れる竜のような幻想的な形に見えることもあり、人々の想像力をかきたてたに違いない。

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