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特集

地球のいのち
絶滅危惧種

JANUARY 2009

文=バーリン・クリンケンボルグ 写真=ジョエル・サートレイ

1973年に米国で誕生した画期的な生物保護法「絶滅危惧種法(ESA)」。絶滅危惧種を生息地ごと守るというその理念はしかし、人間の生活をも制限する。私たちが暮らす生命の惑星をさまざまな角度からレポートするシリーズ企画「地球のいのち」初回は、この法律の功罪を検証する。

 標本ビンに収まった小さな鳥。これが最後の1羽になった。

 米国フロリダ自然史博物館に保管された標本ビン(49ページの写真)。中に収まっているのは、フロリダ州のメリット島に生息していたハマヒメドリの亜種(学名Ammodramus maritimus nigrescens)だ。ラベルを見ると、「Last One」の文字とともに、1987年6月16日に死んだことが記されている。

 その死から3年半後、米国政府はこの鳥の絶滅を公式に認定し、絶滅危惧種のリストからはずした。同時に、ハマヒメドリが暮らしたメリット島の塩水の湿地も、「絶滅危惧種法(ESA: the Endangered Species Act)」にもとづく保全の対象からはずれることとなった。

 メリット島のハマヒメドリを絶滅に追いやったのは何か。原因は「近隣住民の生活改善」にある。ハマヒメドリは食用の鳥ではないし、狩猟の対象にもならない。人間に巣を荒らされたり、天敵を持ち込まれたわけでもない。ただ人々は、自分たちの生活を改善するために、生態系に手を加えてきた。蚊を駆除しようと殺虫剤のDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)を散布し、湿地に淡水性の植物が育つよう海水の流入をせき止めてきたのだ。

 ハマヒメドリは、塩水で育つミクリ科の植物が繁茂する湿地によく適応していた。生態系の絶妙なバランスの上に生息する鳥だったが、人間がそのことに気づいたときにはもう手遅れだった。すみかを奪われた生物はどうなるか。標本ビンの1羽が、その答えだ。

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