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特集

米国の
トレイルを歩く

NOVEMBER 2008

文=メル・ホワイト 写真=ピーター・エシック

国に「トレイル」制度ができて40年。美しい自然散策路を支えているのは、民間の愛好家たちだ。オザーク高原トレイルを「育ての親」と歩いた。

 ホワイトロック山の切りたった頂に立つ。見わたすと、無数の尾根と谷間が波打つように、かなたの地平線まで連なり、その表面をすき間なく森林が覆いつくしている。はるか昔から、まるで変わっていない景観だ。

 もちろんその間には、山火事や嵐で木々が倒れることもあっただろうし、入植者がやってきて森林を伐採していくこともあったはずだ。それでも今、私たちの目の前に広がるのは、かつてこの土地に暮らした先住民、オセージ族が見ていたままの景観なのである。

 ここは米国南部アーカンソー州の北西にあるオザーク高原国立レクリエーショントレイル。面積4900平方キロのオザーク国有林をほぼ横断するように設けられた、全長265キロの自然散策路だ。ホワイトロック山は、トレイルの18マイル標識(スタートから約30キロ地点の標識)あたりにそびえている。山頂からの景観は、アパラチア山脈とロッキー山脈に挟まれた米国中央部では屈指の絶景だが、このトレイルの愛好家たちに言わせれば、ほかにも魅力的な場所はまだまだあるという。

 たとえば、滝や渓流。雨が降るたびに増水するこうした水場は、雨の少ない夏になると、水が引いてひっそりと静かな淵となる。いくらすました人間でも、つい裸で飛び込みたくなるほど澄みきった水をたたえている。彫刻作品のような岩もあれば、エンレイソウやカタクリの花が咲きみだれる丘もある。

 季節ごとに変わる表情も、このトレイルの魅力だ。春にはザイフリボクやハナミズキの白い花に包まれ、秋にはヌマミズキやレッドメープルの葉で赤やオレンジに染まる。冬になって木々の葉が落ちれば、他の季節には生い茂る緑にさえぎられて見えないような、はるかかなたの景色まで望めるようになる。

 「そんなひそやかな景観が、オザーク高原トレイルならではの魅力です」。ティム・アーンストは言った。周囲には彼の言葉そのままの光景が広がる。こじんまりした谷あいの、砂岩の崖にもたれたアーンストの頭上には、背の高いアメリカトネリコの木々がそびえる。聞こえてくる音といえば、シジュウカラやキクイタダキの仲間の鳥がさえずる声や、小さな岩棚を流れ落ちる渓流の音くらいだ。

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