/2008年11月号

トップ > マガジン > 2008年11月号 > 特集:地球の悲鳴 ボルネオ島 迫りくる決断の時


最新号

定期購読

ナショジオクイズ

コブダイの不思議な生態といえば?

  • いろいろな魚に擬態できる
  • 海底を歩くことができる
  • 雌が雄に性転換する

答えを見る

ナショジオとつながる

メールマガジン無料登録(週2回配信)

メルマガ登録の詳細はこちら


特集

地球の悲鳴
ボルネオ島
迫りくる決断の時

NOVEMBER 2008

文=メル・ホワイト 写真=マティアス・クルム

様な動植物をはぐくむ東南アジアのボルネオ島。近年、パーム油の原料となるアブラヤシの農園が急速に広がり、熱帯雨林が消滅しつつある。

 熱帯雨林の目覚まし時計は、テナガザルの愛の叫びだ。まだ暗いうちから、メスの気を引こうと、オスたちは木々の高みで競うように声を上げる。いったいどんな甘い言葉で誘っているのか、地上に下りた彼らの親戚(つまり私)には、あれこれ想像することしかできない。

 キャンプから小川伝いに道なき道をたどって森に入った。あたりには、一番下の枝でも地上から高さ30メートルはありそうな巨木がそびえている。うっそうと茂った林冠からわずかに光が差してくる頃、カニクイザルが姿を見せた。川で魚かカエルにありつこうという魂胆らしい。そのサルが上流に消えてゆくと、今度はチビオマングースが、楽しげに川をはねてきた。

 林がいったん途切れたあたりで、サイチョウのつがいが騒々しい羽音を立てて枝に飛び移り、果実をついばみ始めた。体はほとんど黒く、くちばしにある赤と黄色の大きな突起が光を受けて輝き、薄暗い森に華やかな彩りを添える。すると、さらに色鮮やかな輝きを放つものが、私の腰の高さでひらひら舞った。世界最大級のチョウ、アカエリトリバネアゲハだ。羽を広げると幅20センチ近くもあり、つややかな黒に朱色と緑が映える。たとえ虫や鳥に興味がなくても、その優雅な姿には目を奪われるに違いない。

 ここはボルネオ島北東端に位置する、マレーシアのサバ州。私は小さなボートに乗って幅の広いキナバタンガン川をしばらく下ったあと、狭い支流に入った。目を上げると、テングザルの群れが枝から枝へと跳び移っていた。垂れ下がった大きな鼻をもつのはオスで、とがった鼻をしたメスたちは、ほとんどが子ザルを抱いている。川辺の木々の間からは、ヒゲイノシシがこちらの様子をうかがっている。

 ボートの前方で、1頭のボルネオゾウが川に入って泳ぎだした。どこに向かっているのかと目で追うと、川辺でつる草を食べている30頭ほどのメスや子ゾウが見えた。

 それはまさしく、ボルネオと聞いて人々が思い描く風景、野生の驚異に満ちた緑の楽園だ。だが、こんな姿はもはや残影にすぎない。島の現実、21世紀初めのボルネオを見たければ、カンムリワシになって上空に舞い上がり、はるか下のキナバタンガン川を見下ろすといい。多種多様な木々が生い茂る森を追いやるように、アブラヤシだけが何キロにもわたって整然と並んでいる。緑豊かに見えるこのプランテーションが、かけがえのないボルネオ島の多様な生態系を容赦なく破壊しているのだ。

1Next


ナショナル ジオグラフィック日本版 バックナンバー