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特集

地球にひとつの生命
熱帯雨林の猛者
フィリピンワシ

OCTOBER 2008

文=メル・ホワイト 写真=クラウス・ニゲ

ィリピン諸島の森林で生態系の頂点に君臨するフィリピンワシ。生息地が減少し絶滅の危機にひんする彼らを救おうと、保護活動が始まっている。

 両翼を広げた幅は2メートル。うっそうと茂る熱帯雨林の林冠を縫うように、フィリピンワシが滑空する。大きな体からは思いもよらぬ、正確な身のこなしだ。

 このワシの唯一の生息地がフィリピン諸島だ。島々の環境に見事に適応してきたが、それがかえって自分たちを窮地に追い込むという皮肉な結果を招いている。フィリピンワシは現在、地球上で最も絶滅に近い猛禽類といわれている。

 フィリピン諸島には、トラやヒョウ、クマ、オオカミといった捕食動物がいないため、獲物をめぐる競争がない。つまり、フィリピンワシは戦わずして熱帯雨林の王の座に君臨し、生態系の頂点にゆうゆうとおさまって繁栄を謳歌した。その結果、体長1メートル、体重は最大で6キロという、たくましい体躯を手に入れたのだ。

 雄と雌はつがいになると、2年ごとに一羽のヒナをかえす。子育てをしながら、親子がともに生きていくのに十分な獲物を捕るには、70~130平方キロの森林が必要となる。食べるのは主に、ヒヨケザルなどの小型哺乳類やヘビ、そしてほかの鳥類だ。

 フィリピンワシに関する幅広い研究を続けているフィリピン人の生物学者ヘクター・ミランダは、このように語る。「あれほど大きな体に進化したのは、フィリピン諸島を独占できたからです。しかし、彼らをはぐくんだ森林が消えつつあるいま、進化の代償を払わされているのかもしれません。森林が完全になくなれば、このワシが生き残ることは難しいでしょう」

 現に、フィリピン諸島では猛スピードで森林破壊が進んでいる。伐採と開墾によって原生林の9割以上が失われ、フィリピンワシのつがいは、数百組にまで減少しているという。

 一方で、環境保護に対する国民の意識は高まりつつある。この十年間で、フィリピンは壊滅的な洪水や土石流に幾度となく襲われた。その苦い経験から、森林が消えれば、野生生物ばかりではなく、自分たち人間にも影響が及ぶという認識が広がったのだ。

 近年では、新たな自然保護区も増えている。その一つがミンダナオ島南東部のカブアヤ森林で、およそ70平方キロにわたって広がる区域内では、とくにフィリピンワシの保護に力を入れている。また、ミンダナオ島に拠点を置く保護団体「フィリピンワシ基金」では、生息数の減少を食い止めるため、啓蒙活動に取り組んでいる。ちなみに、フィリピンワシは1995年にフィリピンの国鳥に指定された。

 フィリピンワシ基金の教育センターでは、十数羽のフィリピンワシが飼育されている。わなにかかったり、銃で撃たれたりしたところを救助されたものもいる。いつか、豊かに回復した森に返す日をめざして、繁殖プログラムも実施されている。これまでに21羽が育てられてきた。現在の取り組みで十分と言えるのかどうかはわからないが、成果は上がっている。繁殖プログラムによって無事に育った第一号のヒナは、今年、16回目の誕生日を迎えた。生まれた時につけられた名は「パグ・アサ」。タガログ語で“希望”という意味の言葉だ。

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