/2008年10月号

トップ > マガジン > 2008年10月号 > 特集:天空に一番近い 南米アルティプラノ高原


最新号

ナショジオクイズ

この男性はハイチの露天商ですが、何を売っているのでしょう?

  • 洋服のボタン
  • お菓子

答えを見る

ナショジオとつながる

メールマガジン無料登録(週2回配信)

メルマガ登録の詳細はこちら


特集

天空に一番近い
南米アルティプラノ高原

OCTOBER 2008

文=アルマ・ギエルモプリエト 写真=ジョージ・スタインメッツ

ンデス山脈に抱かれた高原地帯アルティプラノ。ティティカカ湖やウユニ塩原などが点在し、この世のものとは思えぬ光景が広がっている。

 南米大陸に横たわるアルティプラノ(スペイン語で「高原」の意味)ほど、世界屈指の地形が点在する土地はないだろう。ここには、汽船などが航行できる湖としては標高が世界一高いティティカカ湖や世界最大の塩湖であるウユニ塩原があり、アルティプラノそのものも、高原地帯としてはチベットに次いで世界で2番目の広さを誇る。アルゼンチン北部からボリビアを通ってペルー南部まで広がる高原地帯には、氷と火、風と塩が織りなす風景が果てしなく続いている。

 アルティプラノを造ったのは、太平洋の海洋プレートと南米の大陸プレートの激しい衝突だ。この時、アンデス山脈を構成する二つの山系が隆起し、それにはさまれるように、標高の高い広大な盆地が誕生した。ボリビア、チリ、アルゼンチンの国境が接する南端には、鋭く切り立った大きな火山が連なり、今も活発な活動を続けているし、ふもとに広がる凍った大地では、あちらこちらで地中から泥が噴き出している。

 人類が地球に出現する前の情景をこれほど鮮烈に見せつけてくれる土地は、ここ以外にはないだろう。まばゆく輝くウユニ塩原を4輪駆動車で走っていると、時間が止まったような錯覚を起こす。真っ白な塩の平原の彼方に沈みゆく太陽と、反対方向から現れる明るい月を目にした瞬間、“無限の時”がこの世にあることを感じずにはいられなかった。

 風の吹きすさぶ広大なアルティプラノには、樹木がほとんどなく、作物もほとんど育たない。だが、こんな土地にも動物たちはいる。ネズミの仲間のチンチラ、ラクダ科のビクーニャやアルパカ、リャマ、それに、好奇心が旺盛なキツネが暮らし、フラミンゴの大群も姿を見せる。

 また、この高原地帯には数百万の人間もいる。その大半が、ウユニ塩原とティティカカ湖に暮らしている。この一帯も含め、アルティプラノの大部分が現在、ボリビア領だ。

 ボリビアは、アルティプラノの地下深くで続く活発な地質活動のおかげで、豊かな鉱物資源に恵まれてきた。有名なポトシ鉱山から産出する銀鉱石は、数百年の長きにわたりスペイン王室に富をもたらした。20世紀初めには、新たに錫の鉱山がいくつか発見され、世界各地の製缶工場に原材料を供給することとなった。

 アルティプラノは今も資源の宝庫だ。今年から操業を開始したポトシのサン・バルトロメ鉱山は、世界最大の純銀の供給源になると期待されている。さらに低地の地下には、石油と天然ガスの豊かな鉱床もある。

 だが、これほどの富に恵まれながら、ボリビアの国民一人当たりの所得は年間3200ドル(約35万円)ほどにすぎない。この格差がボリビアの発展を阻んできたし、どの政権も問題の解決に失敗し続けてきた。もっとも、この国に賢明な指導者はひと握りしかいなかった。独裁、クーデター、政治腐敗―ボリビアほど多くの失望を味わってきた国はない。第68代大統領のルイス・ガルシア・メサ・テハダは、政敵の暗殺と汚職の罪で今も服役中だ。

 この国をよく知らない人は、肌の色でボリビアを理解しようとするだろう。茶褐色の肌をした貧しい多数派と肌の色が白く裕福な少数派、といった具合だ。だが、国民を分断する要因はそう単純ではない。言語の違いも重要だろう。この国では、人口のおよそ半分がスペイン語しか話せず、残りの半分はアルティプラノの主要言語であるアイマラ語やケチュア語など、30を超える先住民の言葉のいずれかを話すのだ。

 ボリビアは現在、非常に大きな変化の時を迎えている。その担い手は、さまざまな専制支配の下で何世紀にもわたって無言の服従を強いられてきた先住民の人々だ。彼らは自らの権利を求めてデモを行い、当局に公然と歯向かい、繰り返し怒りを爆発させて、自分たちが主役の「新世界」を築こうとしている。2005年、先住民たちが続けてきた運動が大きな実を結んだ。一致団結した投票行動によって、アルティプラノ出身のアイマラ系先住民であるエボ・モラレスを大統領に当選させたのだ。この国の今後の行方は誰にもわからない。それでも、無言の服従の時代に逆戻りすることはまずないだろう。

1


ナショナル ジオグラフィック日本版 バックナンバー