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特集

サルの楽園
ビオコ

OCTOBER 2008

文=バージニア・モレル 写真=ティム・レイマン、イアン・ニコルズ、ジョエル・サートレイ、クリスチャン・ツィーグラー

西アフリカの沖合に浮かぶ赤道ギニア領ビオコ島。ここは、7種のサルをはじめ、1万年以上にわたり独自の進化をとげた希少な動植物の宝庫だ。しかし現在、野生動物の肉を食べる習慣が生態系を脅かしつつある。

 今から457年前、ドイツ南部にある古都アウクスブルクで、とても奇妙な姿かたちをした1頭の動物が公開され、話題を呼んだ。当時の記録によれば、観客に背を向けることが多かったものの、その生き物の手足の指は人間の指とよく似ていて、「陽気な性格」だったという。

 現代の生物学者たちは、当時描かれた図版から判断して、その動物はドリル(学名:Mandrillus leucophaeus)だったのではないかと考えている。ヒヒに似たオナガザル科のドリルは現在でも、野生の状態で観察するのが極めて難しい動物だ。

 だから、西アフリカの赤道ギニア領ビオコ島を先ごろ訪れた生物学者たちが、熱帯雨林でドリルの群れを見つけて、息を殺して食い入るように観察したのも無理はない。ビオコ島に生息する霊長類のなかで最も大型のこの動物は、島の南部にそびえる標高2000メートルを超すグラン・カルデラの底部で、自生しているイチジクの木に登って、その実を食べていた。

 すでにその日の朝、生物学者たちは、アカミミグエノンやクロコロブス、ペナントアカコロブスなど、ほかのサルも見つけていた。それぞれが5~30頭の群れをつくり、けたたましい声を上げている。このうちペナントアカコロブスは、あらゆる霊長類のなかで最も絶滅が危惧されている種だ。

 生物学者たちにとってビオコ島は、閉ざされた環境のなかで植物や動物がどのように進化するかを調査できる“生きた研究室”といえる。この島はアフリカ西岸のギニア湾の沖合30キロに浮かんでいて、これまで氷河期が訪れるたびに、アフリカ大陸と陸続きになってきた。最後に島が大陸とつながっていたのは、およそ1万2000年前だ。こうしてビオコ島は、大陸とは異なる進化の舞台としての役割を果たすこととなった。陸続きだった時期にアフリカ本土から移ってきた生物が、氷河期が終わって島と大陸が海で隔てられると、隔絶された環境のなかで、独自の進化を遂げ、数多くの亜種が生まれたのだ。

 この島には、ドリルをはじめとする7種のサル、4種のガラゴ(小型の霊長類)、2種のダイカー(小型のアンテロープ)、ヤマアラシ、イワダヌキ科のニシキノボリハイラックス、モリアフリカオニネズミ、3種のウロコオリス、ジャコウネコ科のリンサンが生息している。かつてはアフリカスイギュウもいたが、100年ほど前、狩猟によって絶滅してしまった。

 そのほか、ランやカタツムリ、淡水魚、両生類、クモ、昆虫なども、アフリカ大陸に生息する同系統の種とは違う進化を遂げてきた。島の内陸部や森林地帯、草原、熱帯雨林は、15世紀に最初のポルトガル人探検家たちが上陸した頃とほとんど変わっておらず、美しい自然がほぼ手つかずのまま残っている。

 「この島ほど人の手が加わっていない土地は、見たことがありません」と霊長類を研究するゲイル・ハーンは語る。彼女がグラン・カルデラの森を訪れるのは、これで13回目だ。

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