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特集

地球の悲鳴
食を支える土壌を救え

SEPTEMBER 2008

文=チャールズ・C・マン 写真=ジム・リチャードソン

食や砂漠化で失われていく世界の農地。恵みの大地を取り戻す手立てはあるのか。その答えを探して、中国とアフリカ、アマゾンを訪れた。

 巨大なトラクターが轟音をたてながら、トウモロコシ畑を走っていく。9月のある日、米国中西部のウィスコンシン州で開かれた試乗会の会場は盛況だった。ハイテク制御の新型トラクターを見て、集まった農場主たちは顔をほころばす。 だが、耕作を助けるはずの機械が、長い目で見れば、母なる大地を痛めつけてしまうのかもしれない。この世界有数の沃野は、水や空気をたっぷり含んだ、やわらかな表土に覆われている。重い農機が通ると、土の中の水分が押し出され、地盤が踏み固められて、石のようにかたくなってしまう。「圧密」と呼ばれる現象だ。

 地面がかたくなると、植物が根を張れなくなるだけでなく、雨水が地中にしみこまずに表面を流れて、土を浸食する。圧密が地下深くまで及べば、元に戻すのに何十年もかかる場合もある。農機メーカーは、巨大なタイヤを採用して加重を分散させたり、衛星で制御して走行ルートを制限したりと、各種の対策をとっている。それでも、大型の農機を使う経済力のある国々では、圧密は深刻な問題となっている。

 だが、これは土壌を劣化させる一因にすぎない。発展途上国では、人間の活動が浸食と砂漠化を引き起こして、あちこちで耕地が失われ、2億5000万人の生活に直接の影響を及ぼしている。オランダの国際土壌情報センター(ISRIC)の推定では、2000万平方キロ近い土地が人為的な要因で劣化したという。これは北米の面積にも匹敵する広さだ。

 今年の食料不足で、アジアやアフリカ、中南米では暴動まで起きた。その一因に、地球規模で進む耕地の縮小と土壌の劣化がある。2030年には、世界の人口は83億人に達する見込みだ。国連食糧農業機関(FAO)の試算によると、それだけの人々を養うには、穀物の収量を3割ほど増やす必要があるという。

 一方、世界の各地で土壌の改良に取り組む農民や研究者たちは、ひどい荒れ地でも再生できるという手応えを得ている。米国オハイオ州立大学の土壌学者ラッタン・ラルは、土を再生すれば、飢餓ばかりか、水不足や地球温暖化の問題に対処する道も開けると話す。「政情不安、環境破壊、飢え、貧困。すべて根は同じです。長期的には、どの問題を解決するにも、土の再生を避けては通れないのです」

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