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特集

地球にひとつの生命
ゾウの大家族

SEPTEMBER 2008

文=デビッド・クアメン 写真=マイケル・ニコルズ

ニア中部のサンブル県周辺には、同国有数のゾウの生息地が広がっている。この道40年のゾウ研究者と行動を共にし、ゾウたちの雄大な姿をとらえた。

サンブルのゾウたち
写真家のマイケル・ニコルズが、ケニアのサンブル国立保護区に暮らすゾウたちに密着取材し、彼らが食事をし、眠り、遊ぶ姿をとらえた。

動画翻訳

写真家のマイケル・ニコルズは 半年かけて取材を行いケニア・サンブル国立保護区のゾウの姿をとらえた

サンブルのゾウたち

ゾウを被写体にした写真はこれまでにも数多く撮られています
今回の特集では 様々なゾウの家族や家族内での個々のゾウの姿をとらえようとしました
一頭一頭のゾウが 聡明で思いやり深い個体だと読者が感じ取れる写真を撮ろうと考えたのです
このため 撮影には非常に時間がかかりました
私たちが求めている写真を撮るのは大変困難でした

ニコルズがゾウたちを見分ける際は行動調査の主任助手 ダニエル・レンティポが手助けした

今回の調査に不可欠な一頭一頭のゾウに関する情報は――
調査保護団体「セーブ・ジ・エレファント(STE)」のダニエル・レンティポが教えてくれました
彼は 米国カリフォルニアの研究者たちから指導を受けています
ダニエルは個々のゾウを瞬時に識別できます彼は 人間よりもゾウを見分ける方が得意です
ゾウの群れに出くわすと私はダニエルに「あれは誰だい?」と聞きます
家族構成を把握しておけば状況からゾウたちの関係を読みとったり――
何が起こるかを事前に察知できるかもしれません
ダニエルは ゾウとの間を取り持ってくれる通訳のような存在です
ダニエルは ゾウたちのそばを通り過ぎる際に時々 手のひらをこのように前に向けます
ゾウたちがお互いにこのしぐさをするのを私たちは常に見かけており――
おそらくゾウたちのあいさつなのだろうと考えていました
そこで ちょっとした遊びのつもりでカメラを地面に置いて このしぐさをしたら――
若いオスのゾウがゆっくりとあいさつを返してくれたんです

ゾウたちが次第に打ち解けてきたためニコルズは 彼らのありのままの姿を撮影できた

ある夜 月明かりの中を取材に出ましたいい写真が撮れるかどうか 疑問でしたけど
すると 夜中の2時だったためにゾウたちは皆 地面に横たわって寝ていました
こうして私たちは誰も見たことのない光景を撮影できたのです

ゾウは思慮深く 複雑で信じられないほど聡明な動物です
私にとって ゾウは自然を象徴する存在です
また 私たち人間が他のすべての生物と地球を奪い合っている現状を象徴する存在でもあります
私たちがゾウと共存できてゾウがサンブルのような場所で平和に暮らせれば
私たちの未来にも 希望があるでしょう

 生物学者イアン・ダグラス=ハミルトンが、1頭のゾウに忍び寄ろうとしていた。年ごろを迎えた大きな若い雌で、恥ずかしがりだ。ゾウの名前はアン。ケニア北部の奥地にある、小高い丘の木立に半分身を隠して、家族と一緒にのんびりと若葉を食べていた。その首には頑丈な革の首輪がはめられていて、ちょうど肩のあたりに発信器がついている。

 ダグラス=ハミルトンはこの発信器から出る信号を頼りに、アンの居場所を見つけ出した。小型のセスナ機が使えたのは途中までだ。後は背の高い草やアカシアの茂みをかきわけて、自分の足で進まなくてはならなかった。

 身をかがめたダグラス=ハミルトンは、風上に向かって前進し、アンまで30メートルという位置にまで接近していた。アンはひたすら葉っぱを食べている。彼の存在に気づいていないのか、はたまた関心がないのかは、見たところわからなかった。

 ゾウはときに危険な動物である。気難しいうえに興奮しやすく、身を守ろうとするあまりどう猛になる場合があるのだ。ゾウ研究の世界的な権威として40年ものキャリアを誇るダグラス=ハミルトンだからできる技なので、素人は真似してゾウに近寄ったりしないほうがいいだろう。

 彼が確認したいのは、アンの首輪の状態だ。データ収集のターゲットとしてアンを選び、麻酔銃で眠らせて発信器を装着したのだが、その後「成長して首輪がきつくなっているようだ」という報告が入っていた。

ゾウ観察の極意

 ダグラス=ハミルトンは、ゾウを観察するとき、普段ならこんな危険は冒さない。大型の4輪駆動車に乗ったまま慎重に観察するのだが、この一帯は車で進入できなかった。今はアンの健康状態と首輪の具合を確かめることが先決だったので、歩いて接近することにした。首輪についた重りが垂れ下がった状態でないと、首が締めつけられてしまうのだ。

 茂みのなかのアンは、巨大なお尻をこちらに向けていたので首輪の様子を見ることができなかった。そこでダグラス=ハミルトンは、身をかがめたまま、さらに近づいていった。

 その後を、3人の男がそろそろとついていく。デビッド・ダバレンはダグラス=ハミルトンが目をかけている若い助手で、今回のような調査には、たいてい同行する。ウィンチェスターのライフルを構えている男は地元のガイド。そして残る一人が私だ。

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