/2008年8月号

トップ > マガジン > 2008年8月号 > 特集:地球にひとつの生命 海の小さな人気者 ウミウシ


定期購読

ナショジオクイズ

フラミンゴがピンク色の理由は?

  • いつも興奮しているから
  • 食べ物から天然色素を吸収するから
  • 紫外線によってメラニンの合成が促進したから

答えを見る

ナショジオとつながる

週2回
配信

メールマガジン無料登録

メルマガ登録の詳細はこちら



特集

地球にひとつの生命
海の小さな人気者
ウミウシ

AUGUST 2008

文=ジェニファー・S・ホーランド 写真=デビッド・デュビレ

界の海に生息する色とりどりのウミウシは、ダイバーたちの人気者。極彩色をまとい、毒を駆使して身を守る、ちょっと意外な生態を紹介する。

 ウミウシは生まれたての赤ん坊のように無防備な生きものに見える。カタツムリに近縁の、海の無脊椎動物だが、進化の過程で何百万年も前に硬い殻は脱ぎ捨てた。表皮と筋肉と内臓をむきだしにして、ねばねばした足跡を残しながら、海の底をはい回っている。

 ウミウシは、浅い砂地や岩礁から水深1000メートルを超す暗い海底まで、世界各地の海にいる。暖かい海、寒い海、熱水を吹き上げる噴出口など、どこででも生きていける適応力は、見上げたものだ。大きさはおおよそ私たちの指くらい。巻き貝と同じ軟体動物門の腹足綱(ふくそくこう)に分類されるが、殻をもたず、背中に房状のえらが露出している。海底を離れて流れに漂うこともあり、なかには自在に泳げる変わり者もいるが、動きはたいてい、のんびりしている。

 はだか同然で動きものろいウミウシが、捕食者だらけの海で生きていけるのはなぜだろう?

 わかっているだけで3000種もいるウミウシの仲間は、身を守るための多彩な術を備えている。殻の代わりに硬い外皮や、表面の凹凸、ざらつきなどで守りを固めるほか、毒を使うものも多い。毒は、自分の体内でつくる種もいるが、たいていは食べた獲物から、ちゃっかり失敬する。たとえば有毒なカイメンを食べる種は、カイメンがもつ刺激物質を体内で変化させて貯蔵し、敵に襲われるとこの毒を分泌する。

 毒針のような"飛び道具"で武装するウミウシもいる。イソギンチャク、ヒドロ虫、アナサンゴモドキ(ファイアーコーラル)などの刺胞動物を食べたウミウシが、毒のある刺胞をそのまま体内にたくわえ、自分の防御に活用するのだ。

 日中に餌場を求めて移動するウミウシの多くは、派手な色や模様で「武器ならあるぞ」「食べたらまずいぞ」と、捕食者たちに警告している。数百万年の進化が生んだカラフルで奇抜な姿は、緑や茶色の岩礁でよく目立つ。経験の浅い捕食者がうっかり襲うことはあっても、痛い目に遭えば、警戒色の意味を学習していく。こうした色や模様をまねた、毒のない種やほかの海生生物も、襲われにくくなっているようだ。

 夜行性の種や行動範囲の狭いウミウシでは、くすんだ茶色や淡い色をまとって周囲にとけこむ作戦もよくみられる(多くは毒ももっている)。体長30センチ以上もある大きなウミウシでも、自分が食べるカイメンなどの表面にそっくりな色をしていたら、見つけ出すのは至難の業だ。

 隠れ上手の種はともかく、色鮮やかなウミウシたちは、多彩な姿を気前よく披露してくれる。サンゴをかじるもの、岩肌に陣どるもの、海流に流されていくもの。幸運に恵まれれば、食事や生殖のために集まった数十匹、数百匹の大集団に遭遇することもある。また変わったところでは、光合成をする藻類を体内に共生させて栄養分を得ているウミウシもいる。

1Next


ナショナル ジオグラフィック バックナンバー