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特集

地球の悲鳴
アフリカの無法地帯
サヘル

APRIL 2008

文=ポール・サロペック 写真=パスカル・メートル

ハラ砂漠の南に位置する半乾燥地帯サヘル。スーダンのダルフール地方で拘束され、解放後も取材を続けた著者が、その貧困と紛争の実態を伝える。

アフリカの無法地帯 サヘル
ジャーナリストのポール・サロペックによる解説と、写真家パスカル・メートルが 撮影した写真を通じて、過酷で危険なサヘルの実態を紹介する。

動画翻訳

アフリカの無法地帯サヘル
サヘル特集を担当した記者のポール・サロペックです
サヘルはアフリカ大陸北部に広がる半乾燥性の草原地帯です
東西にのびる広大な地域で幅は約5000キロにおよびます
サハラ砂漠と熱帯雨林を隔てるサヘルは
地理的 生物学的 文化的に重要な意味をもつ境界線です
それゆえに この地域では頻繁に紛争が起こってきました
サヘルは非常に貧しい地域です
定期的に干ばつや飢饉に見舞われ降水量は まばらで予測がつきません
人々は土地に根ざした生活をしているため気候の変化に大きな影響を受けます
文化的な対立も存在します
サヘルに暮らす住民は主に 遊牧民と農民です
2つの相いれない生活様式の人々が乏しい資源を分け合わなくてはなりません
また サヘルはアラブ人文化とアフリカ黒人文化の境界線であり――
宗教上の境界線でもあります
北部に住むイスラム教徒と中央アフリカのキリスト教徒を隔てているのです

いくつもの境界線であるサヘルは魅力的な地域ですが 問題も存在します
サヘルの抱える問題とは何でしょうか?この地域には強い政府が存在しません
サヘルにおいて機能しているまとまりは第一に家族 次いで民族集団です
政府には国境を管理する資金がないため一部の地域は無政府状態に陥っています
こうした中で 人々が過激思想に走ることを米国政府は懸念しています
貧困や不正がはびこる地域を見過ごすのは自分たちにとっても危険だと
米国人は 過去数年間で学びました
テレビや新聞では遠く感じられる出来事もいずれ自分の身に降りかかってくるのです

ですから私たちはサヘルに積極的に関わるべきでしょう
米軍は アフリカ大陸特にサヘル地域に興味を示しています
サヘルの国々では政府による統制が弱いため
飢饉 病気 貧困 過激思想などがテロリストの温床となるのを危惧しているのです
米軍は何億ドルもの資金をつぎ込みサヘルで地元の軍隊を訓練しています
また 学校の再建や井戸の掘削を行い米国のイメージ向上に努めています
こうした「戦争予防策」が成功するかどうかは現時点では分かりません
サヘルの人々の苦しみを心に留めておくのは大切なことだと思います
彼らは実に1000年もの間厳しい環境と複雑な関係を乗り越えてきました
私たちがサヘルに関心を失ったあとも彼らの闘いはずっと続くのです

2006夏・ダルフール―フラウィヤ村への道

 2本のわだちが目の前に延びている。

 チャドとの国境からスーダン西部の紛争地帯ダルフール地方へと続く道は、とても道と呼べるしろものではない。サヘルでは、どこに行ってもこんな調子だ。地図にはなく、目にも見えない境界線が、いたるところに存在する。私たちは絶えず、無意識のうちにそうした線を踏み越えているのだ。

 拘束・監禁されていたとき、面会にきた米国人兵士がうんざりしたように言った。「空から見たって、何もない風景が延々と続いているだけなんだ」。よそ者の目には、そうとしか映らないだろう。だが、一見何もない大地にも、見えざる境界線が縦横無尽に走っている。部族や氏族、個人が土地の所有権を主張し、境界線は季節や戦ごとに、その位置を変える。あいまいな領域など皆無だし、うっかり境界を越えれば命の保障はない。そのことを知る者と知らない者を隔てる線こそが、サヘルで最も重要な境界かもしれない。

 そして、サヘルそのものもまた、1本の境界線にほかならない。

 サヘルとは、アフリカ大陸北部の、おおよそ北緯13~16度線に沿って東西に広がる地域で、サハラ砂漠と熱帯雨林を隔てる半乾燥性の草原地帯を指す。もともとはアラビア語で岸辺を意味する言葉だ。アラブ人と黒人、イスラム教徒とキリスト教徒、遊牧民と農民、茶色の大地と緑の風景。サヘルはこれらを分かつ境界であると同時に、世界で最も貧しく無力で忘れられた5000万人が、必死の思いで生きる場所でもある。私たちはダルフールで、34日間だけ彼らの世界に生きることになった。

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