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特集

動物の知力

MARCH 2008

文=バージニア・モレル 写真=ビンセント・J・ミュージ

間の言葉を話す、仲間をだます、道具を考え出す――。動物たちは、私たちの想像を超えた知力をもっている。科学者が動物と二人三脚で続けてきた数々の研究で、その実力が少しずつ明らかになってきた。

 動物に心の内を直接聞いてみたい―。1977年、大学を出たばかりの研究者アイリーン・ペパーバーグは、こう考えて大胆な実験を始めた。彼女は1歳のヨウム(オウムの一種)を研究室に持ち込み、アレックスと名づけて、人間の言葉を教えることにしたのだ。「意思疎通ができるようになれば、鳥がどんなふうに世界を見ているか、話を聞けると思ったんです」

 ペパーバーグが実験を始めた当時、多くの科学者は、動物に考える力などないと思っていた。ロボットと同じように決まりきった反応しかせず、思考や感情とは縁がないと決めつけていたのである。

 いや、うちの犬は違いますよ、と言う人もいるだろう。だが、そんな主張はなかなか通らない。動物に思考力がある、言い換えれば、まわりから得た情報をもとに行動する能力があると科学的に実証するには、どうすればよいのか。

 「そのために、アレックスに協力を仰いだわけです」とペパーバーグ。アレックスは2007年9月に31歳で生涯を閉じたが、私が研究室を訪ねたときはまだ元気だった。ドアを開けると、ペパーバーグはデスクに向かい、アレックスは鳥かごの上に陣どっていた。床には新聞が並び、棚には色とりどりのおもちゃを入れたかごが積みあげられている。アレックスは実験対象というよりも、研究のパートナーのように見えた。

 記憶する、文法や絵文字を理解する、自意識をもつ、他者の思惑を推察する、動作や行動をまねる、何かを創り出す―こうした能力は、高度な知能をもつことを示す重要な指標とみなされている。さまざまな実験を通じて、動物たちにもこのような能力があることが、少しずつ明らかになってきた。

 たとえば、アメリカカケスは、隠した食べ物が盗まれないように策を講じる。ヒツジは仲間の顔を見分けられる。チンパンジーは道具でアリを釣りあげる。イルカは人間のポーズをまねる。ペパーバーグの相棒、アレックスはどうかと言えば、おしゃべりが得意だ。

 アレックスの英語学習歴は長く、ペパーバーグと代々の研究助手が30年にわたって指導してきた。ヨウムは集団で生活するので、仲間との交流が欠かせない。アレックスにとっては、研究スタッフが仲間のようなものだが、本物の鳥の仲間として、若いヨウムも2羽飼われている。

 ペパーバーグはアレックスをシカゴのペット店で買った。後でほかの研究者に「どうせ天才ヨウムを選んだのだろう」と言われたくはなかったので、鳥選びは店員に任せた。ヨウムの脳は、クルミの実ほどの大きさしかない。言葉を教え、考えを聞き出そうとしても、ただの徒労に終わるだろうと、大半の研究仲間は高をくくっていた。

 手話や絵文字(シンボル)を使って動物とコミュニケーションをとる研究は、これまでにもチンパンジーやボノボ(ピグミーチンパンジー)、ゴリラといった類人猿を対象に行われ、多くはめざましい成果を挙げている。たとえば、カンジと名づけられたボノボは、多数の絵文字を使って、研究者と“会話”する。会話といっても、カンジの場合は相手の顔を見て、口を開き、言葉を発するわけではない。ペパーバーグはそれを鳥にやらせようというのだ。

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