/2008年2月号

トップ > マガジン > 2008年2月号 > 特集:ゴリラの家庭学


最新号

定期購読

ナショジオクイズ

こちらの元工場の屋上は農場と、あと何として利用されているでしょうか?

  • レストラン
  • 養殖場
  • 住居

答えを見る

ナショジオとつながる

メールマガジン無料登録(週2回配信)

メルマガ登録の詳細はこちら


特集

ゴリラの家庭学

FEBRUARY 2008

文=マーク・ジェンキンス 写真=イアン・ニコルズ

ンゴ北部のジャングルに暮らすニシローランドゴリラのキンゴ。彼らの保護に取り組む研究者たちと、ゴリラの一家の日常を密着取材した。

 ここで紹介するのは、コンゴのある家族の話だ。

 家長は巨漢の雄で、育児中の4頭の雌には、それぞれ1頭の子どもがいる。そして、まだ若いが母親のいない雌が1頭。10頭のゴリラたちは彼らだけの世界をつくり、うだるように暑く、虫や蝶など様々な命にあふれるジャングルで、仲むつまじく暮らす。

 4頭の母親の名前はママ、メコメ、ベアトリス、アグリーだ。取り仕切り役はママ。家長の一番のお気にいりがメコメであることは、群れでは周知の事実だ。おおらかで気のいいベアトリスはメコメにやきもちを焼くこともなく、いつも機嫌よく振る舞っている。一方アグリーは内気な性格でコミュニケーションがちょっぴり苦手だ。どの母親も自分の子どもを守り、盛り立てようと必死になっている。ママにはクス、メコメにはエケンディという息子がいて、子どもたちはいつも一緒にいたずらばかりしている。ベアトリスには好奇心いっぱいのジャンティ、アグリーには手足の長いボモという赤ん坊がいる。2頭ともまだ幼い赤ん坊を、どこへでも背負って行く。

 肩幅が広く堂々たる体格をした家長は、いつも独りで食事をする。食事中は誰も近づいてはならないのだ。座るとでっぷりと突きでた腹が太ももにかぶさる。ゆっくりと口を動かしながら周囲を見まわすその表情は、どこか退屈そうに見える。

 食事が終わると昼寝の時間だ。日陰に移ると太い腕を投げ出して寝転び、筋肉の盛り上がった厚い胸をふくらませて一呼吸したかと思うと、次の瞬間には眠りに落ちてしまった。メコメがすっと近寄り、そばに横たわる。ベアトリスとアグリーは赤ん坊に乳を与え、ジョージは独りでじっと座り、クスとエケンディは一緒に遊び始める。しばらくして、昼寝から目覚めた父親は、家族を連れて散歩に出かけた。森の木立の間を進みながら、息子たちは父親にぴったり寄り添って一挙一動をまねする。母親たちは、家長の後ろについて歩く。

 家長の名前はキンゴ。体重150キロもあるニシローランドゴリラのシルバーバック(成熟した雄)は、まさにこのジャングルの王者にふさわしい風格だ。キンゴとその家族からなる、このニシローランドゴリラの群れは、コンゴと中央アフリカの国境にまたがる保護区域内で快適に暮らしている。

 彼らの生息地は、東側をヌアバレ・ンドキ国立公園に、西側を中央アフリカのジャンガ・ンドキ国立公園に守られている、コンゴ盆地に残る数少ない原生の熱帯雨林の一つだ。近隣の森では伐採が進み、食肉用にゴリラを捕る密猟者が頻繁に侵入してくる。人類学教授のダイアン・ドラン=シーヒーの努力がなければ、キンゴのすむジャングルは姿を消していただろう。

 ダイアン・ドラン=シーヒーは1995年から毎年、一年の半分をここで過ごし、ゴリラの生態を研究すると同時に、キンゴたちのすむジャングルの保護に尽力してきた。彼女が選んだ研究区域は、政府が伐採権を設定していたエリアだった。しかし、2004年に米国の野生生物保護協会の協力を得て、伐採権を持つフランスの木材会社と交渉し、ジェケ・トライアングルと呼ばれる原始林を、ゴリラのために確保したのだ。その広さはおよそ100平方キロにもわたる。

 ここで研究を始めた最初の年には、ナショナル ジオグラフィック協会とリーキー財団からの助成金で、モンディカ川からほど近い場所にモンディカ・リサーチセンターを設立した。また、ゴリラの居場所をつきとめて観察するため、中央アフリカの狩猟採集民アカ・ピグミーをトラッカー(森の水先案内人)として雇い入れた。

1Next


ナショナル ジオグラフィック日本版 バックナンバー