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特集

地球の悲鳴
廃棄パソコンは
どこへ行く

JANUARY 2008

文=クリス・キャロル 写真=ピーター・エシック

界中で増えつづけているパソコンやテレビなどの電気製品の廃棄物。アジアとアフリカで目にした、“危ないリサイクル”の実態をレポートする。

 さっきまで降っていた雨がやんだ。ここはガーナの首都アクラ。6月は雨期だが、一日じゅう降りっぱなしというわけでもない。朝の日差しがじめつく大気を熱するころ、広大なアグボグブロシエ市場のあちこちから、黒い煙の柱がたちのぼる。私はそのうちの一つをめざして、レタスや料理用バナナを売る屋台や、古タイヤを並べた店を通りすぎ、男たちが背中を丸めて中古の発電機やエンジンのパーツと格闘している部品市場を抜けた。

 やがて、ぬかるんだ道の両側に、年代物のテレビやパソコンのケース、壊れたディスプレイが山と積まれた一画に出た。高さは3メートルにもなる。少し先には、細かく砕かれたプリント基板が集められた山があり、琥珀色や緑色にきらめいている。

 近くまで来てわかったのだが、黒い煙の火元は一つではなかった。たくさんの小さな炎があちこちで燃えている。鼻につんとくる煙の向こうに、いくつもの人影がかすんで見える。棒きれでたき火をかき回す者もいれば、色とりどりのパソコンケーブルを腕いっぱいに抱えた者もいる。よく見ると、ほとんどが子どもだ。

 煙にむせた私はシャツで鼻をおおい、一人の少年に話しかけた。名前はカリム。15歳くらいで、2年前からここで働いているという。カリムが燃料がわりの古タイヤを棒でつつくと、真っ黒な煙で上半身がすっかり見えなくなった。彼はたき火のなかから銅線を取りだし、ざぶりと水をかけて炎を消した。周囲は水びたしだ。こうやって被覆を取りのぞいた銅線をスクラップ業者に売るのだが、難燃処理された被覆をむりやり燃やすと、発がん性物質をはじめ数々の有害物質が発生する。

 後日、入り江近くにある別の廃品焼却場に行ってみた。そこで働く20歳くらいの青年イスラエル・メンサは、場違いなくらいおしゃれな格好で、デザイナーズブランドのメガネをいじりながら、仕事の内容を説明してくれた。

 スクラップ業者が毎日、どこからともなく大量の電子機器を運んでくるが、自分はその出どころは知らない。メンサは家族や友人と金を出しあい、パソコンやテレビを買いとって分解する。ブラウン管からは銅の部品を取りだす(この作業で、神経毒性が強い鉛や、肺や腎臓に障害を引きおこす発がん性物質のカドミウムが地面にまき散らされる)。パソコンのメモリーやドライブも金になるのではずし、ケーブル類は被覆を燃やして銅線を取りだす。これらを売って得た金で、また次の廃品を買うのだ。

 この仕事はスピードが命で、安全は二の次だ。近くの入り江には、ディスプレイの残骸がいくつも浮いている。明日にでもまた雨が降れば、大西洋まで押し流されるのだろう。

 私たち人類とゴミは浅からぬ縁で結ばれている。太古の昔から人類はゴミを排出しながら生きてきた。だが20世紀末になると、有害物質をたっぷり含んだ新種のゴミが登場し、爆発的に広がったその正体はパソコンなどの電気電子廃棄物(e-waste)である。

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