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特集

優雅なる空の王者
アホウドリ

DECEMBER 2007

文=カール・サフィナ 写真=フランス・ランティング

い翼を巧みに操り、流れるように空を舞うアホウドリ。漁船による事故などが原因で絶滅の危機にある彼らの生態と、保護への取り組みを紹介する。

 アホウドリは、この世で最も雄大な鳥だ。骨と筋肉と翼を機械のように操って、風にうまく乗り、弓から放たれた矢のように空を飛ぶ。体には、幾何学的で印象に残る模様と、くっきりとしたラインが描かれている。親鳥は、ヒナの餌を求めて時には1万5000キロも飛ぶことがあるが、かならず家族の元へと戻る。現生の生物では最長を誇るその翼は、広げると最大3.5メートルにもなる。この長い翼を巧みに操り、ほとんど羽ばたくことなく、数百キロも滑空して大海原を渡り、世界を周遊するのだ。アホウドリは長生きで、50歳を迎える頃には総飛行距離が600万キロに達するという。

 翼を羽ばたいて飛ぶ力はほかの鳥たちと大差ない。ずば抜けて素晴らしいのは、その滑空力だ。体から突き出た鋭いナイフのように、翼を体に固定し、グライダーを操る操縦士さながらの巧みさで風に乗る。鳥類の多くは風を相手に苦闘するが、アホウドリは風を味方につけることができるのだ。ほかの鳥との違いは体のつくりだけではない。精密な航行装置のように、その頭脳が優雅な体を上手に操る。いつも岸や波止場でたわむれているカモメに、日常的にこれほどの長距離飛行はこなせない。アホウドリにとって、大海原を渡ることなど朝めし前だ。普段、陸上に降りずに暮らす彼らにとって、陸地は繁殖のために必要な場所に過ぎないのだ。

 翼を広げ、空に舞い上がる瞬間の姿は言葉にならないほど雄大なアホウドリ。だが、空中に比べると地上は苦手のようだ。たまに陸地に下りると、頭をひょこひょこと上下させ、ゴムべらのように平らな足でヨタヨタと歩く。アホウドリの仲間は20種以上を数え、いずれも数カ月から時には数年間、陸地を遠く離れて過ごす。

 彼らが繁殖のためにやってくる陸地は、人間にはとても住むことのできない絶海の孤島だ。それでも、アホウドリは人間に脅かされ、ここ数十年でほぼすべての種の生息数が激減している。私は、今も残る主な繁殖地をいくつか訪ねた。どの場所でもアホウドリは危機にさらされていたが、一方で、どうにかして彼らを救おうとする人々とも出会うことができた。生息数を回復するためには、人間とアホウドリが共存するための方法を考えねばならない。

陸地で迎える恋の季節

 ここは南緯51度、英領フォークランド諸島のスティープルジェイソン島。山々から、ゆるやかな斜面が草むらの生い茂る海岸へと続いている。島の北端では、目を疑うような光景を見ることができる。マユグロアホウドリの群れが海岸をびっしりと覆い尽くしているのだ。鳥たちは海岸に沿って全長4キロにわたり密集している。

 マユグロアホウドリの頭はソフトボールほどの大きさで、黒い目の上にはその名の通り、眉のような一筋の黒い線がある。長さ10センチほどのくちばしのつけ根は淡いからし色、中ほどは透き通るような桃色で、くるりと曲がった先端部は鮮やかなバラ色に彩られている。若鳥のときは、まだくちばしが褐色で、4~5年に及ぶ海上での生活を終えて求愛の季節を迎えると、陸地にやってくる。歌舞伎役者のように大げさな身振りで羽づくろいをし、尾羽を広げてクークーと鳴き、お互いに首を伸ばしくちばしを重ね合う。大きな翼と、手入れの行き届いたつややかな羽毛を相手に見せ、子孫を残すために自分の魅力をアピールする。

 若鳥たちは、なかなか相手を決める気配を見せない。ヒナを育てるには両親の協力が必要不可欠で、どんな相手を選ぶかでヒナの生存率がほぼ決まってしまうため、生涯の伴侶を選ぶという重大な決断にはたっぷりと時間をかけるのだ。求愛期間が2年に及ぶことも多い。求愛のプロセスが進むと、雄と雌は長時間、身を寄せ合い、頭や首の羽毛を優しくつくろい合う。こうすることで、互いへの信頼と思いやりを高めているのだ。彼らはこうして生涯にわたる絆を結び、種を存続させていく。

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