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特集

自然と共に生きる
ハンターたち

NOVEMBER 2007

文=ロバート・M・プール 写真=ウィリアム・アルバート・アラード

物を殺す乱暴者というイメージに反して、野生生物の保護や生息環境の保全を支えるハンターたち。動物や自然を愛する彼らの素顔に迫る。

 地下室から水鳥の群れが飛び出してきた。先陣を切るのは4744羽のマガモ。その後にアイサ、オナガガモ、ハシビロガモ、クビワキンクロなどの大隊が続く。しんがりを務めるのは6000羽余りのカナダガンだ。総勢2万2963羽にのぼる渡り鳥たちは秋から冬にかけてひたすら旅を続け、1月のある朝、ここメリーランド州にある米国魚類野生生物局の研究センターにたどり着いた。これから向かうのは、大西洋岸に飛来した鳥たちの翼の調査会だ。

 そう、実はこの大群は生きた渡り鳥ではない。研究センターに到着したのは、種ごとに分類され、調査が始まるまで地下の冷凍庫に保管されていた大量の翼だった。

 生物学者のノーマン・サークが、マガモの翼を広げて光にかざし、風切り羽の青くつややかな光沢部分を見てほほ笑んだ。「この作業を30年もやっていますが、きれいな翼を見るといまだにわくわくします」。サークはネバダ州の野生生物局を退職後も、翼の調査のために、はるばるこの研究センターまでやって来る。米国では、水鳥の個体群を維持するために専門家の集まりが各地で開催されている。

 翼からは多くの情報が得られる。サークのようなベテランは羽根を見ただけで、雄か雌か、若い鳥か成鳥か、純粋な野生種か交雑種かまで判別できる。1週間にわたる調査会で専門家が翼を調べ、ガン・カモ類のそれぞれの種で次世代の鳥が十分に育ち、地域の個体群を維持できる状態にあるかどうか判断する。さらに、各地域からのこうしたデータをもとに、資源管理の専門家が毎年、それぞれの種の個体群の維持に最低限必要な個体数を予測する。これらを参考に、魚類野生生物局が、米国で保護の対象になっている渡り鳥について、次のシーズンの狩猟枠を設定する。「種が健全に保たれているかどうかを知るには、若鳥と成鳥の比率が重要です」と、魚類野生生物局のポール・パディングは話す。

 皮肉なことに、こうした鳥たちの絶滅を防ぐ取り組みには、彼らの“天敵”とも言うべき狩猟の愛好者、ハンターたちが貢献してきた。米国各地から翼の調査会にサンプルを送っているのは、ハンターなのだ。彼らは獲物となった鳥の翼を封筒に入れ、仕留めた日付と場所を記して郵送する。全米で約1250万人のハンターたちは、これ以外にも様々な形で野生生物の保護管理に関与し、なくてはならない存在となっている。

保護活動に貢献するハンターたち

 一種の狩猟税としてハンターが購入する、水鳥の図柄の証紙「ダック・スタンプ」(上)は、1934年の導入以来、7億ドル余りの収益を上げている。その資金で新たに野生生物の保護地域に指定された土地は210万ヘクタールに及ぶ。また、ハンターは狩猟免許や許可証など様々な形式の狩猟許可に毎年何百万ドルも払い、その収入が各州の生物保護当局の活動を支えている。猟銃や弾薬、その他の装備に課される狩猟税は年間2億5000万ドルにのぼり、その大部分が公的な鳥獣保護区の新設に回されている。さらには、民間レベルでハンターが野生生物の保護に果たす役割も、ますます大きくなっている。

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