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特集

知られざる
洞窟生物の世界

OCTOBER 2007

文=ケビン・クレイジック 写真=デビッド・リトシュワガー

窟で独自の進化を遂げた生物たちは、目が見えなくても自在に動き、わずかな餌や伴侶も見つけて生き延びる。その不思議な世界を紹介する。

 暗く閉ざされた洞窟にうごめく生き物たち。「真洞窟性動物」と呼ばれる彼らは、生き埋めさながらの環境に適応し、闇の中で生まれて、生きて、死んでいく。ヤスデ、クモ、盲目のサンショウウオ、目をもたない魚たち――さまざまな生物種が、永遠の闇とぎりぎりの餌、有毒ガス、果てしない岩の迷宮といった過酷な状況のもとで、動きまわり、伴侶を見つけ、獲物を狩る能力を身につけて、たくましく生きている。隔絶された洞窟でそれぞれ独自の進化を遂げ、外へ出ることもままならないために、単一の洞窟や、さらにはその一画に、ごく少数しか生息していない希少な種も珍しくない。洞窟の生物たちは、謎に満ちた存在だ。

 世界の洞窟のおよそ9割は、入り口がわかりづらいせいで未発見だと考えられている。たとえ調査ずみの洞窟でも、身を潜めるのが得意な洞窟生物たちを見つけるのは容易でない。これまでに約7700種が確認されているが、この数字は氷山の一角に過ぎないだろう。

 行きどまりになった洞窟の奥は空気がよどみ、酸素も乏しい。そんな環境で、ときには何カ月も餌がなくても生きぬくために、洞窟生物の多くは代謝のペースがきわめて遅い。スローライフなだけに寿命は長く、米国アラバマ州のシェルタ洞窟にすむアメリカザリガニの一種(Orconectes australis)は、100歳で子を産み、寿命は175歳に及ぶともいう。

 やたらに長い、あるいは数の多い脚をもち、その先端が鋭くとがっている生物も多い。土砂やがれきを乗り越え、じめじめした岩壁にしがみつけるように適応した結果だ。逆に、紫外線から身を守る体色素や必要のない目は失われ、なかには目を失った空きスペースに脂肪を蓄えるものまでいる。視力がなくても、繊細な付属肢と強力な神経中枢で、気圧や温度、音やにおいのかすかな変化もとらえる。

 1797年、現在のスロベニアにあたる地域の洞窟で、体長約30センチのホライモリが発見された。「真洞窟性動物」では世界初の確認例で、これをしのぐ大きさの真洞窟性動物はいまだに見つかっていない。以来、米国テキサス州のエドワーズ帯水層などで、盲目のサンショウウオや魚類などが次々に発見された。井戸を掘った拍子に、地下水で満ちた未知の洞窟から、こうした生き物たちが噴き上げられることもあるという。

 米国カリフォルニア州シエラネバダ山脈にあるセコイア国立公園とキングズ・キャニオン国立公園では、驚くべき新発見が続いている。これまでに255カ所の洞窟が見つかり、30種に及ぶ新種の無脊椎動物が発見されているのだ。

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