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特集

カナダのタラ漁
大漁の夢今は遠く

APRIL 2007

文=クリス・キャロル 写真=ヨアキム・ラデフォゲッド

ナダ東部のニューファンドランド島沖では、かつては豊富にとれたタラが乱獲で激減。厳しい漁獲制限の中、多くの漁師が廃業の危機に直面する。

 来る日も来る日も海に出て、ずっしり重いはえ縄を引き上げ、輝く体をくねらせるタラを1尾ずつ、手づかみで外していく――何世代も続いてきたそんな暮らしがいつから始まったのか、今となってはわからない。だが、誰の目にも明らかなことが一つある。この海ではもう、タラ漁では暮らしていけないということだ。

 45歳になるレイ・バウチャーは今、漁船を売りに出している。もし買い手が見つかったら、父から子へ、さらにそのまた子へと代々受け継がれ、磨きぬかれてきたタラ漁の技術は絶えてしまう。海面の状態を見ただけで海の底の凹凸を読み取り、魚が潜んでいる場所を見抜くみごとな能力も、彼の代限りで永久に失われる。

 バウチャーは、今のところはまだ漁を続けている。売りに出される漁船が多すぎて、商談がまとまらないからだ。漁業はかつてニューファンドランド島一帯を支える主要産業だったが、最近は小規模な漁民の廃業が相次いでいる。全長10メートル強、グラスファイバー製の船体にディーゼルエンジンを積んだバウチャーの船に、納得のいく値段をつける買い手は現れていない。

 「アウェイテッド・ドリーム」(待望の夢)と名づけられたこの船は、バウチャーが10代で漁を始めたころから、まさに夢みていたものだ。「水の漏らない、頑丈な船がずっと欲しかったんだ。でも、買い時をまちがえたみたいだ」。2003年にこの船を新品で購入してからわずか数カ月後、カナダ政府はタラ漁を一時、全面的に禁止すると発表した。漁獲過剰を理由にタラの漁場が閉鎖されたのは、ここ10年間で2度目のことだった。タラ漁は翌年には解禁されたが、漁獲の割り当て量はごくわずかで、しかも漁民たちは割り当て量の厳守を義務づけられた。ようやく手に入れた新しい船で、バウチャーが生計を立てていくことは、もはや不可能だった。

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