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特集

シリーズ地球の悲鳴
魚が消えた海

APRIL 2007

文=フェン・モンテイン 写真=ランディ・オルソン、ブライアン・スケリー

中海のマグロが、かつてないほど劇的に減っている。日本や欧米に輸出しようと、ハイテク船団が大量捕獲しているためだ。繁殖期のマグロを一網打尽にする、その実態に迫った。

 海を泳ぐ魚のなかで、いちばん堂々たる姿を誇るのは、やはりクロマグロだろう。大きいものだと体長3メートルあまり、体重700キロにも達し、30年近く生きることもある。これほどの巨体にもかかわらず、時速40キロで泳ぎ、水深1000メートルまで潜ることができる。また、ほかの魚とちがって、クロマグロは血液を温かく保つ仕組みをもっているため、北極から熱帯まで、どんな海にも泳いでいける。

 クロマグロにはもう一つ大きな特徴があり、それこそがこの魚を危機に追いこんだ原因となっている。幾重もの脂肪層を含む腹身が、最高級のすしネタ「トロ」になるのだ。

 10年ほど前から、飛行機まで動員して魚群探査を行うハイテク漁船団が、地中海全域で年間数万匹ものマグロをとりまくっている。その多くは違法操業だ。捕獲したマグロは、沿岸の海に網を張ったいけすで太らせてから、日本や欧米にすしやステーキの材料として出荷される。こうした乱獲がたたり、地中海のクロマグロは姿を消しつつある。それなのに、地中海沿岸各国の当局はほとんど対策を講じない。

 「手遅れになりやしないか、とても心配です」と語るのは、スペインの海洋生物学者セルジ・トゥデラだ。彼が所属する世界自然保護基金(WWF)は、クロマグロ漁の規制を訴え続けてきた。「私の脳裏には、19世紀初頭に米国西部を大移動していたアメリカバイソンの群れの姿が鮮やかに浮かびます。そして今、地中海を回遊するクロマグロにも、かつてバイソンを襲ったのと同じ悲劇が迫りつつあるのを、私たちは目の当たりにしているのです」

 クロマグロの激減は、世界の漁業が直面するあらゆる問題を象徴している。新しい技術の登場で、漁獲能力は飛躍的に増大し、多国籍企業が張りめぐらせる複雑なネットワークは、漁業の管理や法規制などお構いなしに、金もうけに走っている。そして消費者は、自分たちが買う魚の来歴に対してあまりにも無関心だ。

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