ハリナシバチ、巣をめぐる熾烈な戦い

2014.11.11
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オーストラリアに生息するハリナシバチが巣をめぐって死闘を繰り広げる。写真は他の巣に襲いかかるメスの働きバチの群れ。

Photograph by Tobias Smith
 オーストラリアに生息する2種類のハリナシバチが巣をめぐって戦いを始めると、数千匹もの働きバチが命を失い、さらには幼虫が巣から引きずり出されて死に至るという、これまで観察されなかった行動が「American Naturalist」誌の12月号に掲載された。 戦いで命を落とすのは、農作物を受粉し、蜜を集めるのに欠かせないメスバチで、オスバチはその間近くで待っているという。

 異種のハチ同士の戦いは何も新しい発見ではない。巣に蓄えられた蜜を狙い、時には巣を乗っ取るという行動は以前から知られているが、オーストラリアのハリナシバチの戦いぶりは、通常の戦いをはるかに超えた壮絶なものだ。一体、なぜこれほど多くの命を危険に晒してまでハチたちは戦うのだろう。

◆傷つき、脚を失くしても、戦い続ける

 オーストラリア南東部では、多くの養蜂家がテトラゴヌラ・カーボナリア(Tetragonula carbonaria)とテトラゴヌラ・ホッキングシ(Tetragonula hockingsi)という2種類のハチの巣箱を並べて飼育している。

 普段は平和に共存しているが、「ある日突然、巣箱の襲撃が始まる」と語るのは、研究リーダーでオーストラリア、ブリスベンにあるクイーンズランド工科大学の昆虫生態学者ポール・カニングハム(Paul Cunningham)氏だ。

 ハチのコロニーが別の巣箱を襲うメカニズムの解明は、安定したハチミツの収穫に繋がる。

 そこでカニングハム氏率いる研究チームは、2008年から2013年にかけてハチの戦う様子を記録した。その間、両種とも攻撃または防衛する側になった。

 2008年7月に始まり4カ月にわたって繰り広げられた戦いでは、T・ホッキングシがT・カーボナリを攻撃し、巣を奪い取った。

 初戦は3日間続き、1日およそ50組のハチが戦ったという。

「戦法は噛み合いだ。大顎で互いに噛みつくと、両者とも離そうとしない」。

 たとえ脚を1本失っても、戦いは終わらない。「昆虫には、あと5本付いているから」とカニングハム氏は説明する。

◆女王を待つ

 2週間以上続いた2回戦では、T・ホッキングシが巣箱の入り口まで到達し、若いT・カーボナリアを巣の外へ引きずり出すことに成功したが、巣箱を乗っ取るまでには至らなかった。

 そして最終戦となる3回目、1000匹もの働きバチを動員し、T・ホッキングシはついに巣箱を奪い取った。およそ1400匹のT・カーボナリアのオス・メス両方の幼虫が巣箱の外へ運び出され、死ぬまで放置された。

 戦いの間、襲撃したコロニーを含む複数の巣からオスバチが集まり、巣箱付近の植物に群がっていたが、終始戦いに加わることはなかったという。

「オスバチが集まって来たのは、繁殖行動と関係があるからだろう」とカニングハム氏は述べる。

 オスバチは定期的に巣箱の周りを飛び回っていた。おそらく征服に成功した女王の到着を待っていたか、あるいは巣箱の中から未交尾の若い女王バチが逃げ出すのを待っていたのだろう。

◆なぜ戦いを?

 研究期間中、カニングハム氏と同僚らはクイーンズランド南東部に点在する260個のT・カーボナリアの巣箱を観察した。

 6年で46回巣が入れ替わったが、T・カーボナリアがT・ホッキングシに追い出されるケースがほとんどだった。

 T・カーボナリアとT・ホッキングシは見た目がそっくりなため、研究チームが遺伝子を解析すると、異種であることが確認された。

 戦いはどのように進行するか。攻撃の間、巣箱の中で何が起こっているのか。女王バチはどのようにして巣箱へ護送されるか。これらの問いに応えるべく、さらなる研究が続く。

Photograph by Tobias Smith

文=Jane J. Lee

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