謎の新種深海生物、“生きた化石”か?

2014.09.04
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新種の深海生物、デンドログランマ・エニグマティカ(Dendrogramma enigmatica)は、1986年にオーストラリア沖の深海から引き上げられ、最近になってようやく命名された。不透明な部分は枝分かれした消化管である。

Photograph by Jorgen Olesen
 1986年にオーストラリア沖の深海で発見されたキノコ形の奇妙な生物が、最近ようやく命名された。 どの現生動物にも分類することができない謎の生物は、太古に絶滅した種に似ているという。この発見は、長い間絶滅したものと考えられ、1938年に南アフリカ沖で発見されたシーラカンスを思い出させる。

 もしその新種が古代生物の子孫であるとすれば、「系統樹の形を完全に変え、動物学の教科書を書き替えるだろう」と、セントオーガスティンにあるフロリダ大学ホイットニー海洋生物学研究室の神経生物学者レオニッド・モローズ(Leonid Moroz)氏は語る。

 長さ2センチほどの小さな生物は、半透明でアンズタケに似ている。キノコの柄に見える部分の先端は口にあたり、消化管とつながっている。消化管は、キノコの傘のような円盤状の部分で繰り返し枝分かれしている。

 採取された標本には裂けたような跡がないため、何かの表面に張り付いていたのではなく、自由に漂っていたようだ。

 円盤状の部分は柔軟性が無く、推進力を与えるような手段もないため、泳ぐことはできなかったと推測される。また、口の周りを囲む突起物から分泌される粘液で微生物を捕えたと考えられている。

◆進化の変わり者

 1986年、甲殻類専門の生物学者ジーン・ジャスト(Jean Just)氏が、オーストラリア沖でこの奇妙な生物を初めて捕獲した。それ以来、同じものは見つかっていない。多くの専門家に相談したところ、わずかでも類似する生物の記録や記憶さえ出てこなかった。

 深海から引き上げられた後、一度ホルマリン漬けにされ、その後エタノールに浸して保存された。そのため、遺伝子解析がほとんど不可能な状態になってしまった。

 遺伝子情報がないと、どの種類に属すのか知ることは困難である。外見から判断して、進化の初期に分岐した古代生物に近いとジャスト氏は言う。

 有櫛動物は系統樹の基部で初めて分岐した生物と考えられているが、デンドログランマは、その有櫛動物や刺胞動物と体の構造が大まかに似ている。また、消化管につながる単一の孔を持ち、そこから食べ物が入り排泄物が出される特徴も同じである。

 デンドログランマが進化を遂げた有櫛動物あるいは刺胞動物という可能性はあるが、近い関係を証明するような特徴はまだ見つかっていない。

◆先祖返り?

 デンドログランマとよく似た現生動物はいないが、三裂動物門(Trilobozoa)に属すとされるアルブマレス(Albumares)やアンフェスタ(Anfesta)、ルゴコニテス(Rugoconites)の化石標本は驚くべき類似性を示している。

 これらの古代生物は、5億4000万年前、エディアカラ紀の後半に絶滅したと考えられている。それはちょうど生物が急速に分岐した、カンブリア爆発の直前にあたる。

 もしデンドログランマがエディアカラ紀に生きた動物の子孫であるとすれば、目に見える形で現存する初めての古代生物となるだろう。

 今回の論文は、9月3日付で科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

Photograph by Jorgen Olesen

文=Jennifer Frazer

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