ネアンデルタール人の絶滅は4万年前?

2014.08.21
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スペインで発掘されたネアンデルタール人の下顎骨。最新の分析から、絶滅した年代が定説より1万年ほど早まった。

Photograph by Thomas Higham / University of Oxford
 最新の化石年代測定から、ネアンデルタール人は定説より1万年早く絶滅していたことが明らかになり、現生人類がヨーロッパに到来したことで絶滅に追い込まれたという説に新たな証拠が加わった。「いつ、どのようにしてネアンデルタール人が絶滅したかは大きな謎だった」と語るのは、研究の著者で英国オックスフォード大学のトム・ハイアム(Tom Higham)氏だ。

 新たな化石年代測定によると、ネアンデルタール人はヨーロッパ西部一帯に孤立した小集団で暮らし、その一部は、現生人類が初めて到来した地域と数千年にわたってモザイクのように重なり合っていた。

 ネアンデルタール人はかつてスペインからシベリアまでの広範囲に暮らしていた。従来の考えでは、現れたのはおよそ23万年前で、絶滅は3万年前とされる。

 しかし、今回の研究では、ヨーロッパで4万5000年前に最も栄え、その後5400年以内に絶滅したという結果になった。

◆孤立したネアンデルタール人

 このたび研究者らは、ジブラルタルからコーカサスにわたって点在する40の洞窟から発掘された196個の動物の骨や貝殻、木炭を分析した。ほとんどはシカやバイソン、マンモスなどの骨で、全てにネアンデルタール人が使った石刃の痕跡が残る。

 これらの骨を年代測定したところ、およそ5万年前から人口が減少し始め、集団が孤立していったことが明らかになった。それはちょうど、初期の現生人類が到来した時期と重なっている。

 両者は同じ動物を捕獲したことから、生存競争によるプレッシャーがネアンデルタール人の集団を孤立させ、絶滅に追いやったと推測される。「孤立して遺伝的多様性を失った種は絶滅する可能性が高い」とハイアム氏は述べる。

 ネアンデルタール人が衰退の一途をたどる頃、イタリアで大規模な火山の噴火が起こった。さらに4万年前、ヨーロッパの気候が寒冷化したため、「すでに人口が減り遺伝的多様性を失ったネアンデルタール人に最後の一撃が加えられた」と、ロンドン自然史博物館のクリス・ストリンガー(Chris Stringer)氏は話す。

 ストリンガー氏は今回の研究結果を称賛し、「全体像がしだいに明らかになってきました。3万9000年前までに、ほぼ絶滅していたでしょう」と述べている。

◆骨に関する論争

 ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学の古生物学者エリック・トリンカウス(Erik Trinkaus)氏は、研究結果に対し批判的で、使用された骨の一部は、ネアンデルタール人がいた年代の地層から出土したものではないと主張している。

 研究の共著者でキャンベラにあるオーストラリア国立大学の放射性炭素年代測定の専門家レイチェル・ウッド(Rachel Wood)氏は、洞窟の層の年代は、個別に測定された火山灰の年代と一致していると反論する。また、「最も下にある層の年代は、上の層よりも古く、年代が混同された10年前の状況とはまったく異なる」と話している。

 発掘現場で近年行われたより精度の高い年代測定では、絶滅したとされる3万年前をさらに遡る結果となった。したがって、ハイアム氏らの考えは正当であると、ドイツにあるテュービンゲン大学の古生物学者カテリーナ・ハーバティ(Katerina Harvati)氏は述べる。

 また、最近の遺伝子研究から、およそ6万年前に現生人類とネアンデルタール人が異種交配していたことが明らかになっている。

 ハイアム氏は、これより後の時代にも交雑が行われた可能性があると話しているが、その時受け継がれた遺伝子はまだ発見されていないと付け加えた。

 今回の研究結果は、8月20日付で「Nature」誌に発表された。

Photograph by Thomas Higham / University of Oxford

文=Dan Vergano

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