イヌは飼い主を取られると嫉妬する

2014.07.25
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家に新しくやってきたイヌを、以前から飼われていたイヌが窓の中から見つめている。

Photograph by Laura Humes / National Geographic Your Shot
 イヌの飼い主にはずっと前から常識だった。イヌは主人の関心がよそへ移ると、明らかに嫉妬する。もっとも、その多くはライバルが自分の社会生活を脅かすと思われる場合だ。 かつては、嫉妬は人間以外には複雑すぎる感情だと考えられていた。しかし新たな論文によれば、イヌは群れの中で社会的に重要なつながりを守るため、嫉妬心とそれに起因する「構ってほしい」という行動を発達させた可能性があるという。

 研究を主導したカリフォルニア大学サンディエゴ校の心理学者クリスティン・ハリス(Christine Harris)氏がイヌの嫉妬感情を調べようと思い立ったのは、両親が飼っている2匹のボーダーコリーと遊んでいるときだった。

「2匹に対して同時に注意を払い、なでたり話しかけたりすると、どちらのイヌも愛情を独り占めできず不満げになることに気付いた」とハリス氏。

◆ライバルの存在を嗅ぎつける

 実験では、生後6カ月の人間の赤ちゃんを対象とした嫉妬の実験方法を応用。ハリス氏と同僚のキャロライン・プルーボスト(Caroline Prouvost)氏は36匹のイヌを対象に、それぞれの飼われている家で実験を行った。2人は飼い主がイヌを無視しているときと、犬の縫いぐるみ(クンクン鳴いたり、吠えたり、尻尾を振ったりする本物そっくりの物)やハロウィーンのカボチャに似せたバケツで遊んでいるとき、飛び出す絵本を大きな声で読んでいるときのイヌの反応をビデオで撮影した。

 その結果見られた行動から、イヌがそれぞれの「ライバル」を見定め、行動を起こしてもよいかどうか判断していることが示された。行動に出た場合、イヌは懸命になって飼い主と「ライバル」との関係を断とうとした。

 具体的には、観察対象となった36匹(犬種はボストンテリア、ヨークシャーテリア、チワワ、パグ、雑種など幅広い)のうち、犬の縫いぐるみをなでたり優しく話しかけたりしている飼い主を押したり触ったりしたイヌは78%に上った。飼い主が同様の行動をカボチャ型のバケツに行ったときに取り乱したのは42%、絵本を読んでいるのを気にしたのは22%にとどまった。

 加えて目を引いたのは、3分の1近いイヌが飼い主と犬の縫いぐるみとの間に割って入ろうとし、25%が縫いぐるみに噛みついたことだった(バケツと本に噛みついたのは1匹だけだった)。また、イヌの86%が本物のイヌにするのと同じように縫いぐるみのお尻のにおいをかいだ。ハリス氏らは、「イヌそっくりのよそ者を本物の脅威と見なしたようだ」と推測する。

 こうした反応はやや意外だった。縫いぐるみは本物のイヌのような動きをせず、においもないため、ハリス氏は「動物の縫いぐるみに対してこのような行動が見られるかどうかは確信がなかった」と話した。

◆人間と同じ感情があるのか?

 では、イヌも人間と同じように嫉妬で思い乱れるのだろうか? 答えはおそらくノーだ。

「人間とイヌは多くの点で異なる」とハリス氏は指摘する。「例えばイヌが悪さをした後、人間のように罪悪について思い悩むかは疑わしい。また人間は他者の心変わりの意味や、関係が続くかどうかを考え『自分は退屈なのか、魅力がないのか』『もう関係が終わってしまうのか』とあらゆる問いを自分に投げかける」。

 ハリス氏は、人間とイヌに種を超えて共通するのはむしろ「慕っている相手とよそ者との触れ合いをやめさせ、関心を取り戻す行動を起こしたいという衝動」だと考えている。「大切な人をライバルに取られたという判断は、こうした衝動を起こすのに十分なのだろう」。

 今回の研究論文は、米オンライン科学誌「PLOS ONE」に7月23日付で掲載された。

Photograph by Laura Humes / National Geographic Your Shot

文=Jennifer S. Holland

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