ホッキョクグマ、氷減少に耐えられる?

2014.07.22
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
カナダ、ハドソン湾セントリー島の岩の多い岸辺をうろつくホッキョクグマ(2013年夏)。

Photograph by Paul Souders / Corbis
 乗っていられる海氷がなくなり、陸地で暮らす羽目になったホッキョクグマが食べる夏のメニューの一例を紹介しよう。ハクガンの卵60個、ガチョウのひな53羽、ガンの成鳥63羽、カリブーの子どもと大人3頭ずつ。付け合わせにベリーを添えて、さあ召し上がれ。 ニューヨーク市にあるアメリカ自然史博物館の生態学者リンダ・J・ゴーメザーノ(Linda J. Gormezano)氏は、ホッキョクグマのシェフではない。しかし、カナダのハドソン湾西部で氷のない季節が年々長くなる中、彼らが生存のために何を食べることになるのかを探っている。

 ゴーメザーノ氏の推計は先週、モンタナ州ミズーラで開催された北米保全生物学会(North America Congress for Conservation Biology)で発表され、この捕食者たちが陸地で得られる食物に頼りながら6カ月間生存できる可能性を示した。そして気候変動のため、この予想は現実になるかもしれない。

 研究者たちはこれまで、北極の気温上昇により海氷が不足し、さらには餌となるアザラシも減少しているため、ホッキョクグマは2020年までに絶滅する可能性があると警告を発してきた。

 世界中に最大2万5000頭いるホッキョクグマのうち、ハドソン湾西部に生息するのは1000頭未満だが、この地域のホッキョクグマは最も観察しやすい個体群の一つだ。

 ホッキョクグマは海氷が維持されている間はその上に乗り、アザラシを食べて暮らしている。海氷が割れてなくなると陸地に上がる。

 従来は、ホッキョクグマは陸上では絶食し、ハドソン湾が再び凍結するまでは何もせず寝転がり、エネルギーを節約するというのが定説だった。

 しかし気候が温暖になれば、海氷はこれまでより早く溶ける。現在、ホッキョクグマは既に1980年代よりも平均3週間早く陸地に現れているとゴーメザーノ氏は話す。そして2060年代後半には、ハドソン湾西部は最長で6カ月間氷のない状態になることもあり得るという。

◆海上から陸上の生活へ

 現在プリンストン大学に所属する生態学者ピーター・モルナー(Peter Molnar)氏の研究チームが2010年に発表したホッキョクグマのエネルギー必要量に関する分析では、餌のない状態が6カ月間続けば、オスのホッキョクグマの成獣のうち28~48%が死亡すると予測されている。ホッキョクグマの個体数を激減させる割合だ。

 しかし、この分析はホッキョクグマが陸地で何も食べないと仮定していた。ゴーメザーノ氏は、この仮定は正しくないと指摘する。

 ゴーメザーノ氏の分析はホッキョクグマのふんや行動の観察から、彼らが小型のハクガンやその卵、カリブーといった陸地の獲物を多く食べていることを示している。同氏はモルナー氏の分析を使いつつも、上記のさまざまな餌を考慮に入れた。

◆未解決の疑問

 ガンやカリブーを狩る際のエネルギー消費量は、獲物から得られるカロリーに見合うのかという点はまだ答えが出ていない。ゴーメザーノ氏は、「もし消費量が大きいとしても、少なくとも現時点ではハドソン湾一帯のハクガンは非常に数が多く、カリブーも豊富にいる」と話している。

 また、「これは、モルナー氏が示したシナリオのような飢餓は避けられる可能性を示している。こうした食糧を得るためにどれだけのエネルギーを消費するかにかかってはいるが」とも述べている。

 これに対しモルナー氏は、まだゴーメザーノ氏の分析を精査していないとしながらも、示されたホッキョクグマの個体数動向の推計には懐疑的だ。「1995~2005年の間に、個体数は大幅に減少している」。

「ホッキョクグマは以前より体調が悪くなっているし、痩せてきていることもわかっている。問われているのは、陸上の食糧をモデルに取り込めるかどうかではなく、なぜ餓死しないだけの量を食べられないのかだろう」。

Photograph by Paul Souders / Corbis

文=Emma Marris in Missoula, Montana

  • このエントリーをはてなブックマークに追加