現生人類は多様な種から進化?

2014.07.04
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岩の上に置かれたアフリカの先行人類アウストラロピテクス・セディバ(セディバ猿人)の頭蓋骨。

Photograph by Brent Stirton / Getty
 石器、大きな脳、歩行のための長い脚。これらの人類の特徴は、数百万年前のアフリカにおいて、複数種の先行人類のあいだで異なる時期に出現した。つまり、これまで考えられていたように同一種から一気に進化したのではないとする新説が発表された。 200万年以上前、東アフリカで森林の後退とサバンナの拡大が進んだ。それに伴い、人類の祖先である類人猿は二足歩行を開始し、自由になった両手で道具を作り始めるなど、陸上での暮らしに適応していった。

 しかし、長らく支持されてきたこの学説を覆す新たな説が発表された。「Science」誌に掲載された報告書には、湿潤な環境から乾燥した環境に次第に移り変わっていったのではなく、気候変動が繰り返されたことによって、ヒト属が出現することになったと述べられている。

 新しい化石証拠が発見されたこと、そして200万年以上前のアフリカで約2万年にわたって湿度の乱高下が続いていた事実が明らかになったことで、ホモ・エレクトスの誕生に関する定説が覆されることとなった。

 大きな脳、現生人類と同じ体型、石器の利用といった特徴を持つ初期人類であるホモ・エレクトスに先行する系統は、決して安定した進化を遂げたわけではない、と論文は述べている。250万~150万年前、アフリカでモンスーン・サバナ気候の拡大のパターンが頻繁に変化するなか、少なくとも3種の初期人類が寄せ集め状態で暮らしていたというのだ。

「幸運だったと言うほかない」とニューヨークのウェンナー・グレン財団の古人類学者、レスリー・アイエロ(Leslie Aiello)氏は述べている。「環境の変化にきちんと適応するように進化していったのだから」。

◆実力より運

 論文によれば、当時存在した先行人類のホモ・ルドルフエンシス(ケニアにあるルドルフ湖(現在の名称はトゥルカナ湖)という湖にちなんでこの名がつけられた)とホモ・ハビリス(ラテン語で“器用な人”)は、頭蓋骨、歯、顎の形状がホモ・エレクトスと共通しているという。このことは、複数種の先行人類のあいだに“人類”固有の特徴が不意に出現したことを示唆している。

 また論文では、南アフリカ共和国で発見されたアウストラロピテクス・セディバ(セディバ猿人)についても触れている(ナショナル ジオグラフィック協会の探検家リー・バーガー(Lee Berger)が発見)。アウストラロピテクス・セディバは約198万年前に存在した二足歩行種で、サルのような腕と小さな脳を持つ一方で、小さな歯といった人類固有の特徴も兼ね備えている。

 このような発見は、より大きな脳と、小さな歯、完全二足歩行といった人類固有の特徴の進化が250万~150万年前に多くの初期人類種のあいだで前進と後退を繰り返しながら進んだことを示すものだ、と論文は述べている。

◆アフリカ以外の地域

 アフリカ以外では、最近グルジアのドマニシ遺跡でホモ・エレクトスの化石が発掘されたことで、人類の進化をめぐる議論に拍車がかかっているとアイエロ氏は言う。約180万年前にドマニシに暮らしていた初期人類には、体の大きさ、頭蓋骨の形、脳の大きさにばらつきがあり、新旧の初期人類種に見られる特徴が混在している。

「“現生人類”の特徴とされているものは、アフリカで長い時間をかけて断片的な特徴が徐々に集まり形成されたと考えられる」と、ロンドン自然史博物館の古人類学者クリス・ストリンガー(Chris Stringer)氏は述べている。なお、ストリンガー氏は今回の論文執筆には関与していない。

「私たちは紆余曲折を経てヒトになることができたのだ」とアイエロ氏は言う。「南アメリカに生息する各種のサルを見ていて、先行人類に似た特徴を発見したことがあるという人もいるだろう」。

 私たちの祖先が過酷な環境の変化を生き抜くことができたのは、彼らが1つのものにこだわらず、進化過程にあった脳と道具を操る手を使って万能型の食生活を送るようになったからだ、と論文は主張する。たとえば、さらに古い時代には食べられていなかったキビやアワなどの雑穀も、この時期に摂取されるようになった。

「特定のものしか食べないという食生活では、食糧は底をつき、やがて死を迎えることになる」とアイエロ氏は言う。「食べるものを変えれば、生き延びることができる」。

Photograph by Brent Stirton / Getty

文=Dan Vergano

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