2014年2月、コペンハーゲン動物園でキリンのマリウスが殺処分後に解体されるのを見学する来園者たち。同園は生後18カ月だったマリウスの死体をライオンに食べさせた。

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 今年2月と3月にキリン1頭とライオン4頭を安楽死させた、デンマークのコペンハーゲン動物園。職員の発言で、議論は激しさを増すかもしれない。「多くの、特に米国の動物園はおとぎ話の世界を守り続けており、来園者たちから自然の本当の姿を隠している」。職員は今週、コペンハーゲンでこのように指摘した。

「私たちは、動物とはかわいらしいだけのもので、生まれはしても決して死なないというディズニーのような物語を広めてはいけない」。コペンハーゲン動物園の科学ディレクター、ベンクト・ホルスト(Bengt Holst)氏は、ユーロサイエンス・オープンフォーラム2014でこう語った。「私たちは『死は生命の自然な帰結だ』という現実に即した物語を伝えなければならず、そこをぼかすなら誠実な仕事とは言えない。我々が動物の保護ではなく空想の世界のために働いていることになるからだ」。

 ヨーロッパの動物園は約30年にわたり、飼育下の動物たちに対し安楽死や間引きを行ってきた。目的は、主に絶滅の危機にある複数の種について、健全で遺伝的多様性が保たれた個体群を作ることだ。他の動物のために場所を空けたり、近親交配を避けるために動物が殺されることもある。

 また、ヨーロッパの動物園は動物の繁殖を必要以上に多く行っている。どれだけのメスが妊娠し、健康な子孫を産めるか予測できないためだ。

◆安楽死のルール

 欧州動物園水族館協会(EAZA)が設けたルールによると、飼育下の繁殖プログラムで動物が生まれすぎた場合は、「苦痛のない迅速な死」が認められる。

 米国動物園水族館協会(AZA)はこの問題についての問い合わせに応じなかったが、前回のメールによる取材では、AZAの渉外担当シニアバイスプレジデント、ロブ・バーノン(Rob Vernon)氏が、「健康な動物の安楽死は、米国ではヨーロッパほど頻繁ではない」と答えていた。

 バーノン氏は、「当協会の認定を受けた動物園や水族館は、人道的な安楽死の慣行に従っている。安楽死は生活の質の問題か、病気の感染予防に関連した医学上の理由で行われるケースが最も多い」ともコメントしていた。

 ホルスト氏によれば、動物園での間引きは野生の世界で起こっていることと変わらないという。例えば、アフリカの子ライオンのうち成獣になれるのは4頭に1頭しかいない。多くは大人のライオンに殺されるからだ。

 動物園は「本当のことを話すのを恐れている」とホルスト氏は言う。「米国の動物園には、動物が死体を食べたり、園が動物にキャットフードを与えたりしているのを見せようとしないところもあるが、おかしな話だ。現実を伝えていないのだから」。

◆国をまたぐ移動は可能か

 ホルスト氏は、殺処分について世界中から抗議を受けたことに「驚いた」としながらも、動物園の個体群をどう管理するのが一番いいのかという問いが、今や「世界中で議題に上っている」ことを歓迎している。

 例えば今回の議論では、動物の国境を超えた移動に対して多くの国が設けている規制に注目が集まった。こうした規制のため、各施設は飼育動物の健全な個体群を保つのが難しくなっている。具体的には、動物園の個体群に新しい動物が導入されなければ、現在いる動物たちが近親交配を行う可能性がある。

 動物園の調査や支援に取り組んでいる南デンマーク大学の生物学者ダリア・コンデ(Dalia Conde)氏は、「厳しい立法は動物たちを違法取引から守るには有効だが、残念ながら、各国の動物園が動物をやり取りすることまで阻んでいる可能性がある」と指摘している。

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文=Christine Dell'Amore in Copenhagen