児童売買の実情、女子生徒拉致で関心

2014.05.19
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ナイジェリアの僻村チボクで数百人の女子生徒を拉致したボコ・ハラムに対する抗議運動の様子。スペイン、マラガ在住のナイジェリア人たちが2014年5月13日に行った。

PHOTOGRAPH BY JON NAZCA / REUTERS
 先月、イスラム過激派組織ボコ・ハラムによってチボクの寄宿学校から連れ去られた300人近くのナイジェリア人女子生徒たちは今、ナイジェリア北東部にあるサンビサ森林地帯の奥深くにいるとされる。正式には動物保護区に指定されているこのエリアには棘のある低木が密生し、長年にわたって密輸入者や犯罪者の巣窟となってきた。 サンビサの森林は人里から離れ、国境も守られていないことから、少女たちの少なくとも一部はすでに隣国のチャドやカメルーンで売られてしまったのではないかと懸念されている。別の過激派組織に引き渡された可能性だけでなく、家事労働や農業労働、性的搾取、強制的な物乞い、児童兵などありとあらゆる労働力が売り買いされる国際的な児童売買市場に連れて行かれた可能性もある。

 国際労働機関(ILO)の推計では、世界で約120万人の児童が売買されている。またアメリカ国務省によれば、現在世界で成人男女と児童合わせて約2700万人が人身売買の被害に遭っているという。ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)の児童保護部門を率いるスーザン・ビッセル(Susan Bissell)氏は、多くの国の「国境は穴だらけで法執行が十分ではない」と話す。また、現在紛争国に住む児童の数は約10億人にのぼり、人身売買を加速させているという。

◆ナイジェリアの児童売買事情

 人身売買に関わる国は送出国、中継国、受入国の3つに分類される。ニューヨークのロチェスター工科大学でアフリカの人身売買を専門とするベンジャミン・N・ローレンス(Benjamin N. Lawrance)氏によると、ナイジェリアのように天然資源が豊富で富裕層が形成され、移動手段が整った国が3つを兼ねる場合もある。

 ローレンス氏は、「ナイジェリアはさまざまな国から売買されてきた児童の重要な受入国となっている。主に家事労働や鉱山労働、カカオ畑などでの農業労働、売春のためにやってくる」と言い、売春が児童労働に占める割合は非常に低いと付け加えた。また、隣国カメルーンやチャドも送出国、中継国、受入国のすべてに該当するという。

 ボコ・ハラムに拉致された少女たちは「人身売買と強制結婚、児童兵の交差地点」に置かれている可能性があると同氏は見ている。彼女たちが兵士と同居し、料理や掃除、運搬をさせられたり、性的行為を強いられたりしているとすれば、専門的には児童兵の定義を満たすからだ。

◆強制労働と性的搾取

 強制労働を目的とする児童売買は、横行しているにもかかわらず、性的搾取を目的とする人身売買に比べて注目を集めにくい。国務省が2012年に追跡し、人身売買で有罪判決となった事例4746件のうち、強制労働を目的とする人身売買はわずか518件だった。「被害者が大人であれ子どもであれ、人は性的人身売買に対してより感情的に反応し、はるかに深刻に受け止める。かといって、労働のために売買された被害者に降りかかる暴力や困難の方が少ないわけではない」と、国務省の人身売買部門でシニアコーディネーターを務めるレイチェル・ユーセイ(Rachel Yousey)氏は語る。

 ワシントンD.C.にある人身売買無料法律センター(Human Trafficking Pro Bono Legal Center)の設立者兼会長マルティナ・バンデンバーグ(Martina Vandenberg)氏によれば、「人身売買の分野では正確な統計データを得ることは極めて困難」だが、おそらく多くの国では強制労働を目的とする人身売買が性的人身売買よりも多く行われているという。

◆標的にされる人々

 児童搾取につながる要因は貧困や戦争、不十分な法執行だけではない。ユーセイ氏は「地理的要因も人身売買に大きく関わる」と話す。労働力を要すると同時に当局の監視の目から離れた鉱山などの天然資源や、人身売買業者が隠れて活動できる僻地、穴だらけの国境などは、どれも一因となり得る。

 自然災害も無縁ではない。ユーセイ氏によると、海外からの救助隊が去り、元の生活を送れない家族が取り残されたケースでは特に顕著だという。

PHOTOGRAPH BY JON NAZCA / REUTERS

文=Eve Conant

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