ヌタウナギの粘液が環境志向の繊維に

2014.04.21
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アメリカ、カリフォルニア州に生息するタイヘイヨウヌタウナギ(学名Eptatretus stoutii)。

Photograph by Norbert Wu. Science Faction/Corbis
 ヌタウナギに嫌悪感を抱く者は少なくない。ウナギのように体をくねらせるこの生き物には主に2つの嫌われる理由がある。1つ目は死にかけている動物をむさぼり食べること、2つ目は瞬時に大量の粘液を分泌することだ。 しかし、カナダ、オンタリオ州のグエルフ大学に所属する統合生物学の専門家ダグラス・ファッジ(Douglas Fudge)氏がヌタウナギの粘液を受け入れる理由を提示している。いつか環境に優しい丈夫な布の生産に利用で きるかもしれないというのだ。「Journal of Experimental Biology」誌に15日付で発表されたファッジ氏らの 研究によれば、ヌタウナギは種ごとに全く異なる方法で身を守るための粘液をつくり出しているという。

 ストレスを受けたときや捕食者から逃れたいときに分泌されるヌタウナギの粘液は2つの部位で構成される。 粘液と微細な繊維だ。いずれも長さ約15センチ、直径はわずか1ミクロンで、人の毛髪や血球よりはるかに細 い。

 このぬるぬるした生き物を1997年から研究しているファッジ氏によれば、粘液に含まれる繊維が捕食者のえら を詰まらせるという。

◆繊維をほどく

 ヌタウナギは77の種が確認されている。ファッジ氏らはそのうちタイセイヨウヌタウナギ(Atlantic hagfish)とタイヘイヨウヌタウナギ(Pacific hagfish)を調べた。

 どちらの種も粘液の繊維は特殊な細胞の内部でつくられる。ちょうど小さな毛糸玉のような形だ。繊維の玉が 粘液とともに体の外に吐き出されると、粘液の作用とのた打ち回るような体の動きによって繊維がほどける。繊 維の玉は1度に2万5000個ほど放出される。

 ただし、タイヘイヨウヌタウナギの繊維の玉は異なる方法でほどける。タイヘイヨウヌタウナギの繊維の玉は タンパク質系の接着剤で固められており、この接着剤が海水に触れると溶けるのだ。接着剤が溶けてなくなると 繊維がほどけ、腹をすかせた捕食者の目の前には突然、おいしいごちそうの代わりに粘液が現れる。

 ヌタウナギがどのように接着剤をつくっているのか、長さ15センチの繊維を細胞内でどのように丸めているの かはまだわかっていない。

◆粘液が服に

 いずれにせよ、ヌタウナギのねばねばした繊維は人のために役立つ可能性がある。この繊維は、クモの糸に負 けないくらい強くて軽いのだ。クモの糸で服をつくるための研究は何年も前から進められている。

「クモの糸は分泌腺でつくられており、その仕組みはまだわかっていない」とファッジ氏は話す。「一方、ヌタ ウナギの粘液は自己組織化が大きくかかわっている」。

 また、ヌタウナギの繊維がつくられる細胞の遺伝子はクモの糸の遺伝子より小さい。そのため、理論的には、 必要な遺伝子を細菌に移植し、ヌタウナギの繊維を大量生産することも可能なはずだ。この繊維はナイロンの代 わりになり、ストッキングやトレーニングパンツの素材として利用できる。

 ナイロンは元をたどれば石油から作られているため、ヌタウナギの繊維で代用できれば地球のためにもなる。

Photograph by Norbert Wu. Science Faction/Corbis

文=Guest Blogger in Weird & Wild

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