16世紀の独語写本に「火猫の計」?

2014.03.12
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ペンシルバニア大学に保管されている1584年の砲術マニュアル「feuerwerkbuch(花火本)」。猫と鳥が火炎袋を背負い、敵の街に攻め込む様子が描かれている。

Photograph by Matt Rourke, AP
 猫が火炎袋を背負って城や村を襲う様子を描いた16世紀の写本が、インターネット上に出回っている。一見、モンティ・パイソン制作かと疑いたくなるのだが、ペンシルバニア大学の常勤研究員ミッチ・フラース(Mitch Fraas)氏によると、真面目な内容の絵なのだそうだ。写本は、猫や鳥を使って敵の街に火をつけることが理論的には可能であると説明している。 問題の絵はペンシルバニア大学でデジタル化された砲術マニュアルの写本に含まれており、絵の横には、動物を放火装置として利用する方法が書かれている。

 フラース氏によるドイツ語原本の翻訳:「小さな袋を火矢のように製造し、(中略)街または城を攻撃するには、その場所に住んでいる猫を捕らえる。その背に袋をくくりつけ、点火し、十分に火が回ったところで猫を放す。猫は近くの街や城へ逃げ込む。恐怖のあまり隠れようとして、うまく納屋の干草やわらの中に逃げ込めば、そこから火事を起こすことができる」。

 しかしフラース氏は、この「陰惨な」作戦が本当に実行に移されたかどうかは疑問だとしている。「うまく成功するとはとても思えない」。

 当時は、書物作成が高価だったため、本を所有できるのは貴族や戦術を学ぶ者などに限られ、戦いとはあまり係わりのない図書室に収められていただろうとフラース氏は言う。

◆意外とよくある戦術?

 フラース氏が初めてこの猫の話に出会ったのは、友人からの情報だった。2012年11月、オーストラリアのブログにペンシルバニア大学のデジタルコレクションに含まれていた奇妙な画像が掲載された。

 同大学では3年前から1800年代以前の写本のデジタル化に取り組んでおり、一般の人も閲覧できるようインターネットで公開している。

 近代およびルネサンス時代の写本には、おかしな落書きや考えもつかない注釈が数多く書き込まれており、フラース氏はこの画像も、「どこかの絵描きが面白半分に描いた落書きだと思った」という。

 そこでフラース氏は、他にも猫爆弾の絵が存在するのかどうか、ツイッターで広く呼びかけてみた。するといくつかの新情報が寄せられたので、さらにデジタル蔵書を調べてみることにした。

 その結果、ルネサンス時代の猫爆弾の絵というのはそれほど珍しいものではなかったことが分かった。猫や鳥を使った火炎攻撃の原画は多くの手書きの写本に登場し、何年も後になって印刷された銅版画にも残されている。

 さらに、動物に爆弾をつけて放すという戦術はヨーロッパに限ったことではないということも分かった。

「多くの人が、似たような例をいくつも歴史の中から引っ張り出してきてくれた。ここ数日間で、多数のメールが寄せられている」とフラース氏は話す。「中国や日本でも、こうしたマニュアル(兵法書)は昔から存在していたようだ」。

 中国のマニュアルでは、牛や馬が武器として使われている(中国戦国時代の斉の武将田単は、角に剣、尾に松明を括り付けた牛1000頭を用意し、夜間、松明に火を点けて敵陣に放ったとされる。この「火牛の計」は、木曽義仲や北条早雲も用いたと伝わる)。

 翻って武装猫の方は、今ではインターネットで「ロケットキャット(rocket cats)」と呼ばれている。

Photograph by Matt Rourke, AP

文=Brad Scriber

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