火星のクレーターは巨大湖だった?

2014.03.11
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
火星のゲイル・クレーターにあるシャープ山(アイオリス山)。赤く示した部分に、網目状の岩石構造「ボッ クスワーク」が続いている。左上の挿入図はクレーターの全容。右下の挿入図は、ボックスワーク地形の拡大図 (スケールバーは50メートルを示す)。

PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA
 最新の研究によると、火星のゲイル・クレーター内側のシャープ山(アイオリス山)に、かつて豊富に水が存在していた可能性があるという。かなり標高が高い地点に、水の影響で形成された地形が確認された。 NASAを中心にさまざまな研究者が、「火星に水が存在していた証拠」を長年にわたって探し続けている。生命 体の可能性に直結するからだ。

 今回の舞台は、エリシウム平原のゲイル・クレーター。中心にそびえる標高5486メートルのシャープ山で網目 状の岩石構造が続く地形が確認され、古代の湖が存在した可能性が出てきた。

 網目状の岩石構造「ボックスワーク」は、大量の水分が生み出す特徴的な地形だという。しかも、クレーター の底から1キロという標高が研究者を驚かせた。

 研究チームのリーダーで、アメリカ、カリフォルニア工科大学の惑星地質学者キルステン・ジーバッハ (Kirsten Siebach)氏は、「ボックスワークは、固い岩石層のつなぎ目に水が浸透して形成され、かつての水 分量を示す指標となる」と説明する。

 2012年、ゲイル・クレーターに着陸したNASAの火星探査車キュリオシティの調査により、水の証拠となるミネ ラル分がシャープ山の麓で発見されている。標高1キロ地点に見つかった新たな水の証拠に、研究チームは沸き 立ったという。

◆水の作る地形

 ボックスワークとおぼしき地形が最初に発見されたのは2008年、周回軌道からの観測結果からだった。その 後、マーズ・リコナイサンス・オービタ搭載のカメラHiRISEの高解像度画像により、詳細な姿がとらえられるよ うになる。地質構造や化学組成の研究が進むにつれ、重要性は高まる一方だった。

 古代都市の廃虚のように不連続なボックスワーク地形は、長さ10~15キロの範囲に広がっている。

 途切れている部分も山中に埋まっているだけで、実際は標高差無く続いているという。「30億年以上前、この 一帯で同時期に生まれたことは間違いない」。

 同様の地形は地球上にも存在し、アメリカ、サウスダコタ州のウインドケーブ国立公園を始め、大規模なテキ サス州南部が知られている。火星では、シャープ山同様の地形が2カ所見つかっている。

◆ボックスワークの作り方

 ジーバッハ氏は、「ボックスワークの成り立ちは、ほぼ確立している。間違えようのない地質構造で、火星に 応用しても問題はない」と語る。

 まず、上部の岩石の重みで、シャープ山の比較的軟らかい岩石層にひびが入る。塩分とミネラル分を含んだ水 が滲入し、残った堆積物が急激に冷えて岩石化していく。この新しく生まれた岩石は、元の堆積鉱床よりも当然 固い。

 時がたつと、軟らかい岩石層は風化してしまい、残った固い岩石が当時の様子を伝えることになる。今後、膨 大な時をかけてシャープ山の侵食が進めば、いずれ何キロも続くボックスワークの全容が表面に現れるだろう。

 現時点での疑問は、「なぜこの標高に水分が存在したのか」という点だ。「さらに高い地点で降った雨が1つ の可能性として考えられる」とジーバッハ氏。

「30億年以上前のゲイル・クレーターは、水分を十分に含んだ堆積物や水で、直径154キロ全体が満たされてい たのかもしれない」。

 研究チームがボックスワーク形成に必要な水量を計算したところ、1平方キロあたり最低0.4立方キロと判明。 「あくまで必要最低限の量で、実際には莫大な水分が存在していた可能性も十分ある」。

◆生命の可能性は?

 水もミネラル分も豊富ならば、周辺が生命に適した環境だったとしても不思議はない。

 ジーバッハ氏は、「キュリオシティはこれからシャープ山に向かう。まだ数年先の話だが、いずれ標高1キロ 地点まで上っていくはず」と今から心待ちにしている。

 今回の研究結果は、「Journal of Geological Research: Planets」誌オンライン版に1月28日付けで掲載され ている。

PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA

文=Marc Kaufman

  • このエントリーをはてなブックマークに追加