海底の不思議な“妖精の輪”、謎を解明

2014.02.10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
デンマーク沖の浅瀬で発見されたいくつもの輪。

Photograph by Jacob T. Johansen
 海で見つかった“妖精の輪”の裏に隠された事実が判明し、一つのミステリーを解決へと導いた。 2008年、デンマークの一部でバルト海に浮かぶムーン島の石灰質の断崖に近い浅瀬で、観光客が海底の奇妙な円形を撮影した。

 その答えが今回、研究によって明らかにされた。海底に蓄積する毒性の硫化物がアマモと呼ばれる植物の生育を妨げ、その周囲に健康なアマモが輪を描くように生えていたのだ。

 それぞれ南デンマーク大学とコペンハーゲン大学の生物学者であるマリアンヌ・ホルマー(Marianne Holmer)氏とジェンス・ボルム(Jens Borum)氏は、直径2〜15メートルの5つの輪から採取したサンプルと、アマモの間に蓄積していた泥を分析した。

 その結果、輪の内側に生えているアマモの根と葉は外側と比べて短く、低密度で、全体的に弱々しいことがわかった。また、泥には植物が枯れるときに作られる硫黄化合物である硫化物が多く含まれていた。

 ドイツの科学誌「Marine Biology」に今月掲載された論文によれば、硫化物は通常であれば海水に含まれる鉄分と結合する。しかし、デンマークの中でも堆積物が石灰質で鉄分が乏しいこのエリアでは、硫化物が堆積物に蓄積し、年を取ったアマモがそれを吸収するという。

 アマモは放射状あるいは中心から外側に向かって成長するため、硫化物にさらされやすく衰弱したアマモは中央、健康で若いアマモはそれを取り巻く外側に生えるようになり、輪を描き出すというのだ。

◆衰退するアマモ

 硫化物は酸素濃度が低い海水にも含まれることが多いが、海水の酸素濃度は汚染によりますます低下している。例えば、肥料をまいた芝生からの排水や工場廃液は海にリンや窒素を送り込み、それを栄養源とする藻類の繁殖を促す。藻類は海水中の酸素を消耗するばかりか、太陽光を遮り、海草を枯れさせてしまう。

 論文には、こういったことや公然と行われる破壊が原因となり、世界各地で海草が衰退の道をたどっていると記されている。

 メリーランド大学環境科学センター(Center for Environmental Science)の海洋生態学者ローラ・マーレイ(Laura Murray)氏はこの研究に携わっていないが、アマモは「多様な海洋生物の重要な生息地」であり、海にとってまずい事態が起きていると話す。

「小さな魚や脱皮をするカニはアマモに身を隠して捕食動物から逃れ、アマモの葉に生える藻は他の生き物のエサになる」と同氏は説明する。

 つまり、アマモは「その場に独自の食物網」を形成しているのだ。

 また、アマモは海岸線を侵食から守り、粒子や堆積物を濾過して水を透明に保つ働きをする。

 南デンマーク大学は、アマモの草原を以前の青々とした状態に戻す取り組みを行う研究プロジェクトであるノヴァグラス(NOVA GRASS)のパートナー兼コーディネーターを務めている。

Photograph by Jacob T. Johansen

文=Liz Langley

  • このエントリーをはてなブックマークに追加