獰猛なことで知られるイリエワニに襲われ、少年1人が死亡、もう1人も負傷した。

PHOTOGRAPH BY ANDREW WATSON, JAI/ CORBIS
 オーストラリア北部で26日、12歳の少年がイリエワニに襲われ死亡、もう1人の少年も負傷した。 ノーザンテリトリーの州都ダーウィンの南東に広がるカカドゥ国立公園は、世界遺産に登録されており、オーストラリアで人気の観光スポットである。襲われた少年らは、園内にある池で泳いでいた。

 この付近では過去12年間で、イリエワニの被害により13人が死亡したと報告されている。そのうちの6人は子どもだった。野生生物を管理する当局は園内に生息するワニの管理に長年取り組んできた。大型のワニは観光の目玉であると同時に、危険も伴う。

 今回の事故を受けて地元警察のスティーブン・コンステーブル(Stephen Constable)巡査部長は、オーストラリア放送協会ラジオ局の取材に対し、「最初1人の少年が襲われたが格闘の末逃れ、次に別の少年が襲われて水の中に引きずり込まれた」と語った。 はじめに襲われた少年は、ワニから逃れたものの両腕に深い傷を負った。

 巡査部長によると、少年らを襲ったワニは体長3メートル前後と思われるが、もしさらに大きければ子どもが逃れることはできないだろうという。

 現場となった池は行き止まり水路として地元では知られ、乾季には部分的に水が残るだけだが、雨季である今の時期は水位が上昇する。

 世界中でこの5年間に700人がワニに襲われ死亡している。その一方、サメによる死者は年間5人、カバによる死者は約3000人、ゾウによる死者は500人、そしてハチによる死者は50~100人ほどである。

◆巨大な捕食動物

 イリエワニ(学名:Crocodylus porosus)は、1億年もの間ほとんど姿を変えていない「生きた化石」である。非常に強力なあごを持ち、地上に生息するクロコダイルの中では最大。ワニ目に属する種類には、クロコダイル、アリゲーター、カイマンなどがいる。

 平均的なオスのイリエワニは、成長すれば体長5メートル、体重450キロに達するが、体長7メートル、体重1000キロという個体も珍しくない。

 イリエワニは「日和見性捕食者」と言われ、水辺に近い水面下に潜み、獲物がやってくるのを辛抱強く待つ。

 スイギュウ、サル、イノシシ、さらにはサメなど、あごで捕らえられるものは何でも捕食すると考えられている。強力な尾を叩きつけて突然水から飛び出し、獲物に食いつくと水の中に引きずり込み、獲物がおぼれるまで離さない。

 泳ぎも得意で、海のはるか沖合いで目撃されたこともあるが、主にインド東部、東南アジア、オーストラリア北部の汽水および淡水域に生息している。

 野生での平均寿命は70年ほど、個体数は世界中で20万~30万頭と見られている。今のところ絶滅が危ぶまれるほどではないが、密猟や生息地の消失などの危機にさらされている。また、ワニを恐れる人間の手にかかることも多い。

◆世界一獰猛なワニ

 イリエワニは、人間を襲う大変危険な生物として知られている。2007年4月、台湾の動物園で、半鎮静状態にあったイリエワニが獣医の前腕部を噛み切るという事件があった。7時間にも及ぶ手術の後、腕は無事接合された。

 2013年12月、ノーザンテリトリーにあるチャールズ・ダーウィン大学の行った調査によると、世界中に生息するクロコダイルの中で、イリエワニは他の6種と比べてはるかに獰猛だというのだ。

 調査はオーストラリアとインドで行われ、若いイリエワニを赤外線カメラで2年間追跡し、その行動を観察した。

 それによるとイリエワニは、敵に向かうと尾を小刻みに震わせ、頭から瞬時に相手に襲い掛かる。こうした行動を取るのはイリエワニだけだという。

 チャールズ・ダーウィン大学の野生生物学者マシュー・ブライエン(Matthew Brien)氏は英「The Guardian」紙の取材に対し、「イリエワニは興奮状態に入ると、まず体を丸く縮めてその勢いで頭を相手のワニに叩きつける。特に繁殖期にある大型のオスはきわめて危険だ。まるで大型ハンマーのように、人間の頭など粉々に砕いてしまうだろう」と説明している。

 調査した他の種類のワニはもっと社会的で、イリエワニほど攻撃的ではなかったという。

PHOTOGRAPH BY ANDREW WATSON, JAI/ CORBIS

文=Brian Clark Howard